ChatGPT無料版のテキストチャットが無制限に——事実誤り62%減でも、中小企業が使いたい機能は上限つき
2026.08.09 朝 | 株式会社NGraph
2026年8月6日(米国時間)、OpenAIはChatGPTの無料版・Goプランの既定モデルを新しい「GPT-5.6 Luna」に切り替え、テキストチャットを無制限にすると発表しました(一次情報)。結論: これは中小企業にとって、AIを配るコストはゼロになったが、AI導入が詰まる場所は無料化では動かない、という話です。
何が起きたか
発表によると、無料版・Goプランの既定モデルは新しい「GPT-5.6 Luna」になり、テキストチャットが無制限になります。難しい質問に対しては、無料ユーザーも新しい「Think」ボタンでより長く考えさせられるようになります。展開時期は段階的で、Plus・Proは更新版「GPT-5.6 Sol」と思考量を選ぶスライダーが発表当日から使えますが、無料版・GoのLunaは発表週のうちに既定モデルへ切り替わり、無制限のテキストチャットとThinkボタンは翌週からです(不正利用対策の制限は別途かかるとしています)。ここで見落とせないのが上限の範囲です。OpenAIは原文で「ファイルのアップロード・画像・その他のツールには引き続き上限が適用される」と明記しています。無制限になったのはテキストチャットだけで、資料を読ませる部分は無料版のままです。有料のPlus・Proは既定モデルが更新版のGPT-5.6 Solになり、InstantとThinkingを同じモデルが思考量スライダーで担うようになりました。なお今回の変更はChatGPTのChat体験のみが対象で、業務エージェント「Work」やコーディング用「Codex」を動かすSolは今回変更されていません。
なぜ重要か
これまで「まず全社員にAIのアカウントを配ろう」という判断が止まっていた理由の一つは、月額費用でした。無料版でテキストチャットが無制限になったことで、その理由が一つ消えます。「有料だから配れない」という言い訳は、テキストのやり取りに関する限り成立しなくなりました。ただし、これは壁が無くなったのではなく、壁の正体が入れ替わったということです。契約の壁が消えたことで、その奥にあった本当の壁が見えるようになったと捉えるべきです。私たちが現場で見てきたAI導入の現在地は「AIは契約した。でも現場で使われていない」という状態です。無料化は契約の壁を消しますが、この使われない壁は消しません。むしろ配りやすくなった分だけ、使われないアカウントが増える可能性すらあります。もう一つ重要なのが、残った上限の位置です。中小企業がAIに投げたい仕事は、テキストの雑談ではなく手元のファイルであることがほとんどです。請求書のPDF、シフト表のExcel、棚や伝票の写真を読ませて処理させたい、という需要が大半を占めます。しかし今回無制限になったのは会話の部分であって、ファイルやツールを使う部分ではありません。「無料でAIが使い放題になった」という見出しだけを見て導入判断をすると、実際に使いたかった機能は依然として上限つきだったという食い違いが起きます。もう一つ確認しておきたいのが精度の数字です。OpenAIは金融・医療・法務など事実性が問われるプロンプトを使った社内評価で、事実誤りを含む回答がGPT-5.6 Lunaで約62%減ったと発表しています。ただしこれは第三者検証ではなく社内評価であり、事実誤りがゼロになったわけでもありません。
中小企業は何をすべきか
- 無料版で足りるかの判定は1問でよい。「その仕事は、ファイルを1つも開かずに終わるか」。終わるなら無料版で足ります。終わらないなら、今回の無制限の対象外です。
- 配る前に、最初の1つの業務を決める。配布は導入ではありません。全員にアカウントを配って終わりにせず、どの業務から使うかを先に決めてください。
- 数字・日付・規則が絡む出力は、人が原本に当てる工程を残す。事実誤りが減ったとしても、確認の工程を無くしてよいという意味ではありません。
その他の注目ニュース(8月9日 朝時点)
- DeepSeek V4 Flash 0731、ARC Prizeが検証(2026年7月31日リリース分) — ARC Prizeが2026年7月31日リリースのDeepSeek V4 Flash 0731を検証し、最大努力設定でARC-AGI-1のSemi-Privateスコア89.0%(1タスクあたり0.02ドル)、ARC-AGI-2で61.4%(同0.04ドル)を記録したと公表しました(一次情報)。推論の単価は年単位で下がり続けています。AIの費用は「今の見積もりが来年も同じ」を前提に契約しない方がよいでしょう。
- Google DeepMind、熱帯低気圧の予測モデルWeatherNextを無償公開(8月6日) — Google DeepMindが8月6日、熱帯低気圧の進路・強度・風の構造を予測するモデル「WeatherNext」を発表しました。3日先の予測が従来モデルの2日先と同等の精度で、最大15日先まで1つの低気圧につき1,000通りのシナリオを生成できます。コードとモデルの重みはオープンソースで公開され、軽量版は無料のColabノートブックで動かせます(一次情報)。天候が売上に直結する飲食・小売にとって予測の材料が無償で公開されましたが、そのまま使えるものではなく、自社の数字と結びつける工程が要ります。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、日程が後ろ倒しに — 第1回公募は令和8年6月29日に開始していますが、事務局サイトを実際に確認したところ、当初の申請受付「8月31日」と応募締切「9月30日」はどちらも取り消し線で消され、現行は申請受付が令和8年9月30日、応募締切が令和8年10月30日18時厳守に変更されていました(一次情報)。旧日程のまま書かれた解説記事がWeb上に多数残っています。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で取得に時間がかかるため、日程が延びた今のうちに入口だけ整えておく価値があります(対象経費の実務判定はAI導入に使える補助金はどれかで解説しています)。
・OpenAI「Improving GPT-5.6 Sol in ChatGPT—and expanding access to GPT-5.6 Luna for free users」(2026年8月6日)
・ARC Prize「DeepSeek V4 Flash 0731 Results」(2026年7月31日リリース分・検証結果)
・Google DeepMind「WeatherNext AI model achieves breakthrough in forecasting cyclones」(2026年8月6日)
・中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」事務局サイト(2026年8月9日確認)
