AI導入に使える補助金はどれか——「AI」と書いてある制度は1つもない。8制度の対象経費を読み解く実務判定表
2026.08.07 | 株式会社NGraph
AI導入の相談を受けていると、ほぼ必ず出てくる質問が「これ、補助金は使えますか」です。そこで検索する側に立って公的な補助金サイトを見てみると、実は迷子になりやすい構造になっています。「AI導入」に使えそうな補助金の対象経費欄を8制度分すべて読んでも、「AI」という単語そのものはどこにも出てきません。出てくるのは「機械装置・システム構築費」「専用ソフトウェア」「クラウド利用料」といった言葉です。この記事では、AI導入に関係し得る8つの公的制度を対象経費の書きぶりから読み解き、実務で使える判定表に整理します。
・AI導入に関係し得る8制度の状態・締切・上限額・補助率・対象経費・GビズID要否の一覧
・「AI」という言葉が8制度のどこにも明記されていない理由と、対象経費の読み方
・150万円のAI導入なら自己負担がいくらになるかの計算例と、よくある3つの失敗
結論:8制度の実務判定表
まず結論です。AI導入に関係し得る8制度を、状態・締切・上限額・補助率・対象経費・GビズIDプライムの要否で並べました。制度名の詳細と根拠は次の章以降で解説します。
| 制度 | 状態 | 直近の締切 | 上限額 | 補助率・助成率 | ソフト・システムは対象経費か | GビズIDプライム |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ①省力化〈一般型〉 | 受付前(第8回) | 10月中旬予定 | 750万〜8,000万円 (賃上げ時1,000万〜1億円) | 中小1/2・小規模2/3 | ○対象(システム構築費等。「AI」の明記なし) | 必要 |
| ②省力化〈カタログ型〉 | 公募中(随時) | 随時受付 | 200万〜1,000万円 (賃上げ時300万〜1,500万円) | 1/2以下 | △製品本体価格が中心(カタログ選定式) | 記載なし |
| ③デジタル化・AI導入2026 | 公募中(1次) | 8月25日17:00 | 5万円〜450万円 (プロセス数で変動) | 1/2以内 (賃金要件で2/3以内) | ○対象(ソフト購入費・クラウド利用料等。AI固有の記載はなし) | 必要 |
| ④ものづくり(旧・第23次) | 未定(次回未告知) | — | (参考)750万〜2,500万円 | (参考)中小1/2・小規模2/3 | ?不明(次回の詳細が未公表) | (参考)必要 |
| ⑤新事業進出・ものづくり | 公募中(第1回) | 10月30日18:00 | 750万〜2,500万円 (賃上げ特例850万〜3,500万円) | 中小1/2・小規模2/3 | ◎8制度で最も明確に明記 | 必要(発行に1週間程度) |
| ⑥持続化補助金 | 受付前(第20回) | 12月15日17:00 (受付11/5〜) | 50万円 (上乗せ併用で最大250万円) | 2/3(赤字特例3/4) | ○対象(ウェブサイト関連費に明記) | 必要 |
| ⑦業務改善助成金 | 受付前 | 9/1受付開始〜 最低賃金発効日前日 or 11/30 | 30万〜450万円 (特例10人以上区分600万円) | 3/4〜4/5 | △限定的(POSレジ等の例示のみ。PC等は原則対象外) | 電子申請時のみ |
| ⑧新事業進出(旧制度) | 終了 | — | — | — | — | — |
この一覧だけでも分かる通り、対象経費の書きぶりは制度によって「○対象」「△限定的」「?不明」とばらつきます。次の章では、なぜどの制度にも「AI」という言葉そのものが出てこないのか、その構造を読み解きます。
どの制度にも「AI」とは書いていない——対象経費の読み方
「AI導入 補助金」で検索すると迷子になる理由
「AI導入 補助金」で検索して公式サイトの対象経費ページを開いた経験がある方は多いはずです。そこでつまずくのは、「AI」という単語を探しても見つからないという点です。本文で扱った8制度の対象経費の記述をすべて確認しましたが、「AI」あるいは「人工知能」という単語が明記されている箇所は1つもありませんでした。唯一出てくるのは③デジタル化・AI導入補助金2026の制度名だけで、対象経費ページ自体にAI固有の記載はありません。
代わりに書かれているのは、「機械装置・システム構築費」(①省力化〈一般型〉)、「専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費」(⑤新事業進出・ものづくり)、「ソフトウェア購入費・クラウド利用料」(③デジタル化・AI導入2026)、「業務効率化のためのソフトウェア」「顧客管理システムの構築」(⑥持続化補助金)といった、より一般的な言葉です。AI活用のためのツール・システムであっても、申請書の上では「AI」ではなく「ソフトウェア」「システム」「機械装置」という切り口で書く必要があるということです。
対象経費の書きぶりは4パターンに分かれる
8制度を対象経費の書きぶりで整理すると、次の4パターンに分かれます。
| 書きぶり | 該当する制度 | 特徴 |
|---|---|---|
| ◎最も明確 | ⑤新事業進出・ものづくり | 「専用ソフトウェア・情報システム等」と、機械装置費の中でソフトウェア構築を名指しで明記 |
| ○対象(包括的) | ①省力化〈一般型〉・③デジタル化AI導入2026・⑥持続化補助金 | 「システム構築費」「ソフトウェア購入費」等の言葉はあるが、AI固有の記載はない |
| △限定的 | ②省力化〈カタログ型〉・⑦業務改善助成金 | カタログ製品や例示(POSレジ等)の範囲にとどまり、汎用ソフトの扱いは狭い |
| ?不明・終了 | ④ものづくり(旧)・⑧新事業進出(旧) | 次回未告知、または公募終了で対象経費を確認できない |
この4パターンのうち、AI活用のためのソフトウェア・システム投資を計画するなら、まず◎と○に分類される4制度(①③⑤⑥)の公募要領を読むところから始めるのが効率的です。
制度別の詳細
①中小企業省力化投資補助金〈一般型〉
第8回は公募開始が2026年8月中旬(予定)、申請受付開始が9月中旬(予定)、締切が10月中旬(予定)です。上限額は従業員規模で変わり、5人以下は750万円(賃上げ時1,000万円)、101人以上は8,000万円(賃上げ時1億円)です。補助率は中小企業1/2・小規模事業者2/3。対象経費は機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費で、「AI」の明記はありません。GビズIDプライムが必要です。公式:中小企業省力化投資補助金〈一般型〉。第8回のGビズID周りの実務は省力化投資補助金 第8回は8月中旬公募開始の記事もあわせてご覧ください。
②同〈カタログ注文型〉
交付申請は随時受付中です。上限額は従業員規模別に、5人以下200万円(賃上げ時300万円)、6〜20人500万円(同750万円)、21人以上1,000万円(同1,500万円)で、補助率は1/2以下。対象経費は、あらかじめカタログに登録された省力化製品の本体価格と導入経費で、ソフトウェア単体というより「製品を選ぶ」方式です。GビズIDの要否は当該ページに記載がありません。公式:中小企業省力化投資補助金〈カタログ注文型〉。
③デジタル化・AI導入補助金2026
正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金(旧IT導入補助金)です。1次締切は2026年8月25日17:00、交付決定は10月7日予定で、2次以降の締切は未確定です。通常枠は、1プロセス以上なら5万円〜150万円未満、4プロセス以上なら150万円〜450万円で、補助率は1/2以内(一定の賃金要件を満たす場合は2/3以内)。対象経費はソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入コンサル、導入設定、研修、保守で、制度名に「AI導入」とあるものの、対象経費ページ自体にAI固有の記載はありません。GビズIDプライムが全枠共通で必要です。公式:デジタル化・AI導入補助金2026。GビズIDの取得方法はGビズIDとは?の記事もご参照ください。
④ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
第23次(締切2026年5月8日)で公募が終了しており、2026年8月7日時点で第24次の告知は公式サイトにありません。後継の統合制度(後述の⑤)への移行が進んでいるとみられますが、公式に「終了」と明示されているわけでもないため、この記事では「次回公募は未告知」とのみ記載します。参考値として、第23次の製品・サービス高付加価値化枠の上限は750万〜2,500万円、補助率は中小1/2・小規模2/3で、GビズIDプライムが必要でした。公式:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金。
⑤新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
2026年6月に新設された統合制度で、現在第1回公募中です。公募要領PDF(第1.1版)記載の応募締切は令和8年10月30日(金)18:00。なお申請受付開始日は、公式サイト上に8月31日・9月30日という新旧2つの表記が併記されており、2026年8月7日時点では確定日を判別できないため、公式サイトで直接ご確認ください。革新的新製品・サービス枠は750万〜2,500万円(賃上げ特例時850万〜3,500万円)で、ほかに新事業進出枠・グローバル枠があります。補助率は中小1/2・小規模2/3。機械装置・システム構築費には「専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費」と明記されており、8制度の中でソフトウェア・システム構築が最も明確に対象と書かれている制度です。クラウドサービス利用費等も対象。GビズIDプライムが必要で、公募要領には発行に1週間程度かかると明記されています。公式:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金。全体像は新事業進出・ものづくり補助金、第1回公募の記事も参照してください。
⑥小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉
第20回は、申請受付開始が2026年11月5日、締切が12月15日17:00、様式4の発行受付締切が12月4日です(商工会議所地区はjizokukahojokin.info、商工会地区はofficial.jizokukanb.com)。上限額は50万円で、インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円、両方併用の場合は+200万円の上乗せがあります(併用時の上限は250万円)。補助率は2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4)。対象経費のうちウェブサイト関連費に「業務効率化のためのソフトウェア」「顧客管理システムの構築」「アプリケーション開発」が明記されていますが、「AI」の明記はありません。GビズIDプライムが必要です。
⑦業務改善助成金(厚生労働省・令和8年度)
申請受付は令和8年9月1日から、地域別最低賃金発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までです。上限額はコース(50円・70円・90円)×引上げ人数の組み合わせで30万〜450万円、特例事業者の10人以上区分では最大600万円。助成率は事業場内最低賃金1,050円未満の事業者が4/5、1,050円以上が3/4です。対象経費は生産性向上に資する設備投資等で、POSレジ・顧客管理情報のシステム化等が例示されますが、パソコン・スマートフォン・タブレットは原則対象外(特例事業者のみ可)です。GビズIDは電子申請時のみ必要。公式:業務改善助成金。詳しい内訳は業務改善助成金 令和8年度とは?の記事で解説しています。
⑧中小企業新事業進出補助金(旧制度)
公式サイトに「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。新規の申請は前述の⑤新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ移行しています。公式:中小企業新事業進出補助金。
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例えば150万円のAI導入なら実質いくらか
対象経費に当てはまることが分かっても、次に気になるのは「実際いくら自己負担が減るのか」です。例えば、デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠(1〜3プロセス、補助率1/2以内)を使って、150万円のAIツール導入・システム構築を行う場合を計算してみます。
| 条件 | 計算 | 補助額 | 自己負担 |
|---|---|---|---|
| 通常(補助率1/2) | 150万円 × 1/2 | 75万円 | 75万円 |
| 賃金要件を満たす場合(補助率2/3) | 150万円 × 2/3 | 100万円 | 50万円 |
通常の補助率1/2であれば、150万円の投資に対して補助額は75万円、自己負担も同額の75万円です。公式サイトの注記によれば、令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合は補助率が2/3以内となり、その場合の自己負担は50万円まで下がります。いずれも算出された補助額は1〜3プロセス枠の上限「150万円未満」の範囲内です。あくまで「例えば」の試算であり、実際の補助額はプロセス数の判定・交付決定の審査結果によって変わります。
よくある失敗
- ①枠の取り違え。同じ「中小企業省力化投資補助金」でも〈一般型〉と〈カタログ注文型〉では上限額・対象経費の考え方がまったく異なります。前者は自由度の高い設計ができる代わりに交付決定までの審査があり、後者はカタログ掲載製品から選ぶ方式で導入までのスピードが早い、という違いがあります。制度名だけで判断せず、枠ごとの対象経費と手続きの違いを確認する必要があります。
- ②GビズIDプライムの発行待ち。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領には、GビズIDプライムアカウントの発行に1週間程度かかると明記されています。本文で扱った8制度のうち5制度でGビズIDプライムが必要なため、申請を決めてから発行手続きを始めると、締切までの実務日数を圧迫します。制度の利用を検討し始めた時点でアカウントの状態を確認しておくのが安全です。
- ③交付決定前の発注は対象外。業務改善助成金では、交付決定より前に設備投資等を発注・契約・納品すると、その時点で助成の対象外になることが公募要領に明記されています。同様の「交付決定を待ってから動く」という原則は、他の補助金・助成金でも広く採用されている考え方です。「良いツールが見つかったのですぐ契約したい」という気持ちが、補助金を使えなくする典型的な落とし穴になります。
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現場で見た「対象経費」の正体
よくある質問
AIツールの導入はどの補助金が使えますか?
1つに決まった答えはありません。中小企業省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金2026、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、小規模事業者持続化補助金など複数の制度で、ソフトウェアやシステム構築の費用が対象経費に含まれます。どの制度にも「AI」という言葉自体は明記されていないため、自社の投資内容がどの制度の対象経費の定義に当てはまるかを、本文の判定表と各公募要領で確認する必要があります。
ChatGPTなどのAIツールの月額利用料は補助対象になりますか?
制度によります。デジタル化・AI導入補助金2026の対象経費には「クラウド利用料(最大2年分)」が明記されており、クラウド型のAIツール利用料はこの区分に該当する可能性があります。ただし個別ツールが実際に対象と認められるかはIT導入支援事業者や交付事務局への確認が前提で、断定はできません。契約前に確認することをおすすめします。
GビズIDとは何ですか?
国の行政サービスに共通で使える法人・個人事業主向けのアカウントです。本文の8制度のうち、①省力化〈一般型〉・③デジタル化・AI導入2026・⑤新事業進出・ものづくり・⑥持続化補助金では、最上位区分の「GビズIDプライム」が必要です。⑤の公募要領には、プライムアカウントの発行に1週間程度かかると明記されています。
いつ申請すればいいですか?
制度ごとに締切が異なるため、本文の判定表で自社が使えそうな制度の直近締切を確認するのが最初の一歩です。交付決定前に発注・契約すると対象外になる制度があり(業務改善助成金など)、GビズIDプライムの発行にも日数がかかるため、締切から逆算した早めの準備が必要です。
申請は自分でできますか?
制度によっては自社での申請も可能ですが、デジタル化・AI導入補助金2026のようにIT導入支援事業者を通す必要がある制度もあります。対象経費の該当性判断には専門知識が要る場面もあるため、不安があれば各制度の事務局や専門家に確認しながら進めることをおすすめします。当社は行政書士ではないため、個別の制度適否の断定的な判断はできません。
まとめ
AI導入に関係し得る8制度の対象経費を読み解くと、共通しているのは「AI」という言葉がどこにも書かれていないという事実です。制度名に「AI」を掲げるデジタル化・AI導入補助金2026でさえ、対象経費のページ自体にAI固有の記載はありません。代わりに書かれているのは「システム構築費」「専用ソフトウェア」「クラウド利用料」という言葉です。8制度の中では⑤新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が最も明確にソフトウェア・システム構築を対象経費として明記しており、①省力化〈一般型〉・③デジタル化・AI導入2026・⑥持続化補助金がそれに続きます。自己負担は、例えば150万円の投資なら補助率1/2で75万円、要件を満たせば2/3で50万円まで下がります。ただし交付決定前の発注は対象外になる原則があり、GビズIDプライムの発行にも日数がかかるため、締切からの逆算が欠かせません。まずは自社の投資内容が、どの制度のどの言葉に当てはまるかを判定表から確認してみてください。
・中小企業省力化投資補助金〈一般型〉
・中小企業省力化投資補助金〈カタログ注文型〉
・デジタル化・AI導入補助金2026(中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金)
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
・小規模事業者持続化補助金〈一般型〉(商工会議所地区)/同(商工会地区)
・厚生労働省「業務改善助成金」(令和8年度)
・中小企業新事業進出補助金(旧制度・公募終了)
・関連記事:業務改善助成金 令和8年度とは?/GビズIDとは?/省力化投資補助金 第8回は8月中旬公募開始/新事業進出・ものづくり補助金、第1回公募/AI導入の費用はいくらか(いずれも当ブログ)
