日本は仕事でAIに「やらせて」いない——OpenAI国別データ79か国中79位と、聞く側から抜ける手順
2026.08.10 朝 | 株式会社NGraph
2026年8月6日、OpenAIがChatGPTの利用実態を国別に集計したデータ「OpenAI Signals」を公開しました(一次情報)。国別のデータ公開はこれが初めてだと同社は書いています。ただし、公開されたのは世界全体の傾向を示す発表で、日本については書かれていません。そこで私たちは公開データ本体(CSV)を落とし、日本の行だけを取り出しました。以下の数字はその抽出結果です。結論を先に言うと、日本は仕事の場面でAIに「やらせる」割合が、集計対象79か国の中で最下位でした。ただし「仕事でAIを使っていない」わけではありません。使ってはいて、中身が「聞く」と「言う」に寄っています。
何が起きたか
OpenAIの発表本文によると、世界全体では次のような傾向が見られるといいます。まず、仕事の場面では、仕事以外の場面に比べてAIに作業を任せる「doing」の使い方をする可能性が2倍以上になります。次に、画像や動画などを組み合わせて作る「マルチメディア」用途が世界で最も伸びており、全メッセージの7.8%を占めるまでになりました。年齢構成にも変化があり、35歳以上のユーザーが送るメッセージの割合は世界のほぼすべての国で上昇し、フランスとチェコでは1年で10ポイント超上昇したといいます。OpenAIは、対象を10億人以上が使うChatGPTの利用実態だと説明しています(一次情報)。
なぜ重要か
日本の数字は、公開データ本体(CSV・READMEはVersion 2.0)から抽出しました。分類の意味は次の通りです——asking=情報を聞く、doing=作業を任せて成果物を出させる、expressing=感想や気持ちを述べる。いずれもOpenAIの分類器(AIがメッセージ内容から機械的に推定する仕組み)による推定であり、利用者の自己申告ではありません。
- 仕事関連メッセージ中のdoing比率(2026年6月)は32.0%。集計対象79か国の中央値44.2%に対し、日本は79位=最下位でした。同じ仕事関連メッセージのasking比率は37.2%(中央値32.7%)、expressingは30.8%(中央値22.9%)と、いずれも中央値より高くなっています。
- 仕事以外のメッセージでもdoing比率は13.6%で、対象120か国の中央値21.2%を下回ります。
- 一方で、全メッセージに占める仕事関連の割合は28.9%で、127か国中63位。中央値28.7%とほぼ同じ、世界のほぼ真ん中です。
- トピック別では「Self-expression(自己表現)」が17.9%(中央値8.3%)と際立って高く、「Multimedia」は4.6%(中央値7.3%、世界全体は7.8%)と低めです。
- 35歳以上が送ったメッセージの割合は2026年6月時点で40.5%。1年前(2025年6月)の33.7%から6.8ポイント上昇しています。
この最下位は一時的ではありません。2025年11月〜2026年6月の8か月すべてで、日本は対象国中つねに最下位または最下位から2番目でした(対象国数は月により76〜82か国)。一人当たりメッセージ数の順位も、2026年Q2は147か国中57位・Q1は144か国中57位で横ばいです(2025年Q1の96位から1年で伸ばした後、足踏み中)。doing比率の上位はパナマ56.2%・ボリビア55.6%・フィリピン55.0%・グアテマラ53.6%・メキシコ53.5%で中南米・東南アジア圏が並び、下から2番目はスウェーデン33.0%、日本との差はわずか1ポイントです。
仕事のAI利用で「やらせる」割合、日本は79か国中79位
ここから読み取れるのは、入口は開いているのに、中で仕事が渡っていないという形です。仕事関連メッセージの割合は世界のほぼ真ん中なのに、その中身のdoingだけが最下位——これは私たちがFDE型の導入支援で入口に置いている「AIは契約した。でも現場で使われていない」という状態と、同じ形をしています。契約や利用自体は止まっていません。止まっているのは、AIに何を渡すかという中身の方です。
ただし、この数字で言えないこともあります。集計対象は消費者向けプラン(Free・Go・Plus・Pro)のメッセージのみで、企業・組織が管理するアカウントは含まれません。OpenAI自身が「そのためbusiness useを過小評価している可能性が高い」と書いています。サンプルは毎月30万メッセージで、差分プライバシー(個々の利用者が特定できないよう統計にわざと誤差を混ぜる手法)のためのノイズも加えられています。そして、asking・doing・expressingの分類自体が、利用者の自己申告ではなくAIの分類器による推定です。「日本人は仕事でAIに指示を出さない」と言い切れる調査ではなく、消費者向けチャットの利用実態から見えた傾向、という範囲で読む必要があります。
中小企業は何をすべきか
- 今週AIに「聞いた」ことのうち1つを、「やらせる」に書き換える。聞いて自分で作るのをやめ、成果物まで出させて、人は直す側に回ってみてください。
- 任せる前に「これが出てきたらOK」の条件を先に文章にする。doingに回すと詰まるのは、指示の書き方ではなく受け入れ基準が無いことがほとんどです。
- 検査を人の目でなく仕組みに持たせる。ただし、検査が動いていること自体を定期的に疑う。仕組みにした瞬間に安心してしまうと、壊れたまま気づかない期間が生まれます。
その他の注目ニュース(8月10日 朝時点)
- デジタル化・AI導入補助金2026、第4次締切は8月25日 — 通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の第4次締切は8月25日(複数者連携デジタル化・AI導入枠の第2次締切も同日)(一次情報)。交付申請の前にGビズIDプライムとSECURITY ACTIONの自己宣言が要るため、間に合うかは事前手続き次第です。
- 小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>(第3回)、8月14日申請開始 — 中小企業庁が7月8日公開の公募要領によると、申請受付は8/14〜9/30。商工会・商工会議所などの地域振興等機関が主体となり、複数の小規模事業者の改良・ブランディング支援や販路開拓の機会提供を行う取組を支援します(一次情報)。事業者単独では出せないため、自分が申請者になれるかの確認からです。
- Googleが「Gemini Omni」の利用事例を公開(8月7日) — 会話と同じ手軽さで動画を作れるとし、5人の作り手が編集やアイデアの可視化に使う事例を公開しました(一次情報)。作る手間が下がるほど、出す前の確認を誰の仕事にするか先に決めておく必要があります。
・OpenAI「From asking to doing: How the world is putting ChatGPT to work」(2026年8月6日)
・OpenAI「OpenAI Signals」(データ公開ページ・公開CSV)
・中小企業庁「補助金公募情報」(デジタル化・AI導入補助金2026)
・中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<共同・協業型>(第3回)公募要領」(2026年7月8日)
・Google「Gemini Omni builders」(2026年8月7日)
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