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中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か——調査3本が割れる理由と、自社が入る数字の見分け方

2026.09.03 夕 | 株式会社NGraph 中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か——調査3本が割れる理由と、自社が入る数字の見分け方

中小企業の生成AI活用は、いま何%か。この問いに対して、直近半年で公表された3つの調査は別々の数字を出しています。帝国データバンクは34.5%、商工組合中央金庫、略して商工中金は31.1%、独立行政法人中小企業基盤整備機構、略して中小機構は20.4%——最大と最小の差は14.1ポイントです。3つとも同じ「中小企業のAI利用」を調べているように見えますが、実際は聞いた時期も、聞いた相手も、数えたものも違います。この記事では3本の一次情報を突き合わせ、数字が割れる理由を4つに分解したうえで、自社がどの数字に入るのかを見分ける手順を示します。

この記事でわかること
・20.4%・31.1%・34.5%という3つの数字が、それぞれ何を数えた結果か
・数字が割れる理由を「いつ・誰に・何を・どう」の4つに分けた読み方
・自社の状態が3つの調査でどう数えられるかを判定する手順

3つの調査は、20.4%・31.1%・34.5%と答えている

まず、直近半年で公表された3つの調査を並べます。同じ「中小企業のAI利用」を尋ねているのに、数字は20.4%から34.5%まで開いています。

中小機構商工中金帝国データバンク
公表日2026年3月2026年3月31日2026年5月14日
調査期間2025年11月17日〜12月12日2025年12月19日〜2026年1月16日2026年3月17日〜3月31日
対象・有効回答全国中小企業10,000社に配布・有効回答1,647社同金庫の取引先中小企業・有効回答3,892社全国2万3,349社・有効回答1万312社・大企業含む
数えたものAI技術全般(画像認識・音声認識・生成AIなど)の導入生成AIの導入・活用状況生成AIの活用の実感
数字20.4%(全社的導入+一部業務導入)31.1%(会社主導導入+個人登録の活用推奨)34.5%(活用している、と回答した割合・全体)

同じ「中小企業のAI利用」が、3つの調査で20.4%から34.5%までひらく

帝国データバンク/活用している34.5%商工中金/積極活用層31.1%中小機構/AI導入率20.4%3つとも正しい。数えているものと、聞いた相手と、時期が違うだけ出所:中小機構(2026年3月)/商工中金(2026年1月調査)/帝国データバンク(2026年3月調査)

3本とも公的な調査であり、どれかが間違っているわけではありません。数字が違って見えるのは、後述する4つの理由が同時に働いているためです。次の章から、その理由を一つずつ分解します。

数字が割れる理由は4つ——「いつ」「誰に」「何を」「どう」聞いたか

3つの調査を突き合わせると、数字の差は次の4つの違いに分解できます。ここがこの記事でいちばん厚く書く部分です。

いつ聞いたか——調査期間には約4か月の開きがある

公表日で並べると、中小機構は2026年3月、商工中金は2026年3月31日、帝国データバンクは2026年5月14日で、時系列に近く見えます。ところが公表日と、実際に企業へ質問を投げた調査期間は別物です。中小機構の調査期間は2025年11月17日から12月12日、商工中金は2025年12月19日から2026年1月16日(調査時点は2026年1月1日現在)、帝国データバンクは2026年3月17日から3月31日でした。もっとも古い中小機構の調査開始と、もっとも新しい帝国データバンクの調査終了の間には、約4か月半の開きがあります。生成AIの企業活用はこの数か月でも動くテーマであり、公表日だけで並べると時点がずれたまま比較することになるため、調査期間をそろえる必要があります。

誰に聞いたか——母集団の作り方が3通り違う

中小機構は全国の中小企業10,000社に調査票を配布し、有効回答は1,647社でした。商工中金は自らの取引先中小企業のうち、非上場企業を中心に選んだ相手に郵送し、有効回答は3,892社です。帝国データバンクは全国2万3,349社を対象に、有効回答は1万312社でした。ここで見落としやすいのは、帝国データバンクの調査対象には大企業も含まれていることです。企業規模別に見ると、大企業は46.5%、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%となっており、規模が小さいほど数字は下がります。全体の34.5%は、大企業を含めた平均値であり、中小企業だけの実感を表す数字ではありません。

何を数えたか——「AI全般」か「生成AI」かが違う

中小機構が数えているのは、AI技術を用いたサービス全般の導入率で、例として画像認識、音声認識、生成AIなどが挙げられています。生成AIだけの数字ではありません。一方、商工中金と帝国データバンクは、どちらも生成AIに絞って質問しています。中小機構の調査でも、導入済み企業のうち生成AIを利用している割合は82.6%に達しており、実態としては生成AIが主戦場です。ただし20.4%という数字自体は、あくまでAI全般の導入率として発表されている点に注意が必要です。

どう聞いたか——「導入」の定義が3通り違う

商工中金の31.1%は、会社として全社的または一部部署にパッケージを導入している層に、会社としては導入していないが個人登録の生成AI活用を推奨している層を足した「生成AI積極活用層」の割合です。会社として契約していなくても、この定義には入ります。帝国データバンクの34.5%は、活用の度合いを6段階で尋ねた回答のうち「非常に活用している」と「やや活用している」を合わせた割合です。聞いているのは業務でどれくらい活用しているかであり、公表されている区分に会社としての契約の有無は出てきません。中小機構の20.4%は「全社的に導入している」と「一部の業務で導入している」の合計で、会社としての導入だけを数えています。この3つの定義の違いにより、同じ会社が、3つの調査に別々の答えを返すことができます。会社として契約しているAIがあれば中小機構の調査では導入企業に入り、同じ会社の社員が個人のアカウントでも別のAIを使っていれば、商工中金の調査ではその要素も同時に持つ、ということが起こり得るということです。

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「導入している」の中身は会社ごとに違う——商工中金の7区分

数字の割れ方をさらに細かく見るために、商工中金の調査が生成AIの導入状況をどう区分しているかを見ます。有効回答3,892社の内訳は次の7つです。

「会社としては導入していない」が64.9%——中小企業の生成AIの導入状況

64.9%個人の判断に任せている14.9%個人登録の活用を推奨11.2%一部部署でパッケージ導入4.1%全社的にパッケージ導入2.5%その他1.4%禁止・制限0.9%自社専用AI・エージェント会社が入れているのは16.2%。残りは個人の判断か、会社が関与していない出所:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」有効回答3,892社

会社として全社的にパッケージを導入している企業は4.1%、一部部署での導入は11.2%、自社専用モデル・AIエージェントの導入は0.9%です。この3つを足すと16.2%になり、これが会社として何らかの形でAIを導入している割合です。残りのうち、もっとも多いのは「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」64.9%で、全体の3分の2近くを占めます。個人登録の生成AIの社内業務への活用を推奨している企業は14.9%、禁止・制限している企業は1.4%でした。「31.1%」という積極活用層の数字は、会社主導の16.2%に個人登録の活用推奨14.9%を足した数字であり、会社としてAIを契約していない企業も相当数含まれています。

AIを入れた会社の82.6%が使っているのは生成AIだった

中小機構の調査は、AI技術全般の導入率を数えている一方で、導入済み企業(n=322)が実際に何を使っているかも尋ねています。結果は次の通りです。

AIを入れた中小企業の82.6%が使っているのは生成AIだった

生成AI82.6%音声認識・音声対話AI29.8%画像認識AI11.2%需要予測AI8.1%その他7.5%異常検知AI4.3%2位の音声認識と52.8ポイント差。中小企業のAI導入は、いま生成AIとほぼ同義になっている出所:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」n=322・複数回答

生成AIが82.6%で、2位の音声認識・音声対話AI(29.8%)に52.8ポイントの差をつけています。画像認識AIは11.2%、需要予測AIは8.1%、異常検知AIは4.3%でした(複数回答)。「AI導入率20.4%」という数字は建前上AI全般の話でも、実態としては生成AIの導入率とほぼ重なって読める、ということがこの図から読み取れます。導入目的でも「業務効率化・作業時間の短縮」が87.0%でもっとも多く、実際の導入効果でも同項目が83.2%を占めており、中小企業のAI活用が事務作業の効率化を中心に進んでいる構図と一致します。

会社が入れるか、個人任せにするかで、効果の感じ方が変わる

数字の割れ方の次に押さえておきたいのは、会社主導か個人任せかで、経営者の実感がどう変わるかです。商工中金の調査は、生成AI積極活用層に「経営へのプラスの効果を感じているか」を尋ねています。

会社が入れた方が、経営へのプラス効果を感じている割合が高い

36.6%会社による導入26.0%個人登録AIの利用推奨原資料の記述は「10%pt以上高い」。個人任せのままだと、使えていても経営の実感に届きにくい出所:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」生成AI積極活用層への設問

会社による導入企業では36.6%が経営へのプラス効果を感じているのに対し、個人登録AIの利用推奨企業では26.0%にとどまります。原資料は「10%pt以上高い」と記述しています。導入しない理由・課題の1位である「具体的な活用場面が不明」でも、積極活用層全体では21.5%だったのに対し、積極活用層以外では42.0%と、約2倍の開きがありました(全体では35.6%)。活用場面が見えている企業ほど積極活用層に入り、積極活用層の中でも会社が主導している企業ほど、経営への効果を実感しやすいという構図です。

うちが3つの調査に答えたら、3つとも違う答えになる。NGraphは、AIを使って毎日の仕事をしている。だが上の3つの調査票が同時に届いたら、うちは3つとも違う欄にマルを付けることになる。会社として契約しているAIのサービスがあるので、中小機構の「一部の業務で導入している」には入る。一方で、社員が個人のアカウントで使っているAIもあり、そちらは会社が管理していない。商工中金の区分でいえば「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」にも同時に当てはまる部分がある。帝国データバンクの「活用している/していない」は回答した人の実感なので、答える人が誰かで結果が変わる。毎日AIに原稿を書かせている人間が答えるのと、経理を担当している人間が答えるのとでは、同じ会社について別の答えが出る。ここから分かるのは、調査の数字が間違っているのではなく、「導入している会社」という線が1本ではないということだ。数字を比べる前に、その調査がどの線を引いたのかを見る必要がある。

よくある失敗——調査の数字の使い方でやりがちなNGパターン

3つの調査を扱うとき、実際に起きやすい間違いを4つ挙げます。

自社の状態がどのNGパターンに近いか気になる方は、無料相談・無料AI診断からご相談ください。

自社がどの数字に入るかを決める手順

ここまでの内容を踏まえ、自社の状態を3つの調査の定義に当てはめる判定表を作りました。埋められない欄は「—」にしています。

会社の状態中小機構での数え方商工中金での数え方帝国データバンクでの数え方
全社でパッケージを契約している全社的に導入している全社的にパッケージ導入(4.1%)活用の度合いを6段階で聞かれる。公表されている区分に会社の契約の有無は出てこない
一部の部署だけ契約している一部の業務で導入している一部部署でパッケージ導入(11.2%)同上
会社は契約せず、個人利用を推奨している個人登録の活用を推奨(14.9%)同上
会社は契約せず、個人の判断に任せている個人の判断に任せている(64.9%)同上
使用を禁止・制限している禁止・制限(1.4%)同上

この表からも分かる通り、中小機構の公表資料に出てくるのは会社として導入したかどうかまでで、個人任せの状態を切り分けた数字は示されていません。商工中金はここを7区分まで割っており、粒度そのものが違います。帝国データバンクが公表しているのは活用の度合いで、会社の契約の有無による区分は出てきません。自社の状態を判断するときの手順は次の3つです。1つ目は、上の表の左列から自社の状態にいちばん近い行を選ぶこと。2つ目は、選んだ行の3列を見て、自社が「導入企業」に数えられるかどうかが調査によって変わることを確認すること。3つ目は、目的に応じて使う調査を選ぶことです。会社主導と個人任せで効果の実感に差が出ることを社内で説明したいなら商工中金の36.6%対26.0%の数字が使え、生成AIの利用実感の水準を見たいなら帝国データバンクの数字が使えます。次に取る行動としては、まず自社の従業員のAI利用を「会社契約か・個人利用か」の2軸で棚卸しし、判定表のどの行に当てはまるかを書き出すことから始めるのが実務的です。

よくある質問

中小企業の生成AI導入率は結局何%ですか

20.4%は中小機構、31.1%は商工中金、34.5%は帝国データバンクの数字です。それぞれが違うものを数えた結果であり、単一の正解はありません。自社の状態を判定表に当てはめて、どの数字と比較すべきかを先に決める必要があります。

なぜ調査によって20.4%・31.1%・34.5%と数字が違うのですか

調査期間が最大で約4か月半ずれていること、聞いた相手の母集団が違うこと(帝国データバンクの調査には大企業も含まれます)、数えている対象がAI全般か生成AI限定かで違うこと、そして導入の定義が会社主導だけか個人任せまで含めるか本人の実感かで違うこと、の4つが理由です。

商工中金の「生成AI積極活用層」31.1%とは何ですか

会社として全社的または一部部署にパッケージを導入している企業と、会社としては導入していないが個人登録の生成AI活用を推奨している企業を合わせた割合です。会社が契約していなくても、活用を推奨していれば入る定義になっています。

帝国データバンクの34.5%は中小企業だけの数字ですか

34.5%は大企業を含む全体の数字です。企業規模別では中小企業が32.4%、小規模企業が28.0%で、規模が小さいほど数字は下がります。中小企業だけの実感を見るなら32.4%の方が近い数字です。

中小機構の20.4%は生成AI限定の数字ですか

違います。中小機構の調査が数えているのは画像認識・音声認識・生成AIなどを含むAI技術全般の導入率です。導入済み企業のうち生成AIを使っている割合は82.6%なので、実態としては生成AIが主戦場ですが、20.4%という数字自体はAI全般の導入率です。

自社が3つの調査に同時に答えたら、どうなりますか

会社として契約しているAIサービスがあれば、中小機構の調査では「導入している」に入ります。同時に社員が個人のアカウントでも使っている場合、商工中金の調査では「個人の判断に任せている」の要素も同時に持つことになります。帝国データバンクの「活用している」は回答する人の実感であり、誰が答えるかによって変わる数字です。同じ会社が、3つの調査に別々の答えを返せるということです。

どの数字を経営判断の根拠にすればいいですか

自社の状態(全社契約・一部部署契約・個人任せ・禁止など)を先に決めてから、その状態に近い定義を使っている調査を選びます。会社主導と個人任せで効果の感じ方に差が出ることを確認したいなら商工中金の調査、生成AIの利用実感の推移を見たいなら帝国データバンクの調査というように、目的に応じて使い分けるのが実態に近い読み方です。

まとめ

中小企業の生成AI導入率は、20.4%・31.1%・34.5%という3つの数字を持っています。そのどれも間違いではありません。調査期間・対象企業・数える範囲・導入の定義という4つの前提が、それぞれ違うだけです。会社として契約しているかどうかで経営への効果の実感にも差が出るため(36.6%対26.0%)、「導入している」を一律に扱うと、自社に必要な手を見誤ります。数字を経営判断に使うときは、まず自社の状態を判定表のどの行に当てはめられるかを確認し、そのうえでどの調査の定義がいちばん近いかを選ぶ、という順番が実態に合っています。

自社が「導入している」に入るかどうかから、一緒に整理します。

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参考(一次情報):
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」(2026年3月公表。調査期間2025年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社に配布・有効回答1,647社)
・商工組合中央金庫「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(2026年3月31日公表。調査時点2026年1月1日現在、調査期間2025年12月19日〜2026年1月16日、有効回答3,892社)
・帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日公表。調査期間2026年3月17日〜3月31日、有効回答1万312社)
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