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インボイスの8割控除は2026年9月で終わる——10月から7割・「5割」と書いた解説が古い理由

2026.08.11 夕 | 株式会社NGraph インボイスの8割控除は2026年9月で終わる——10月から7割・「5割」と書いた解説が古い理由

インボイス制度(適格請求書等保存方式)には、免税事業者など適格請求書を発行できない相手からの課税仕入れでも、一定割合を仕入税額控除できる経過措置があります。この控除割合が2026年9月30日で80%の期間を終え、10月1日から70%に下がります。あわせて、経過措置の対象になる仕入額の上限も10億円から1億円に変わります。ところが、いまもネット上には「2026年10月から控除は5割になる」と書かれた解説が残っています。これは嘘ではありません——50%は改正前の予定で実在した数字です。ただしその数字が付いている時期が、いまの制度とずれています。この記事では、国税庁・財務省の一次情報だけを根拠に、①2026年10月からの正しい変更点、②「5割」の解説が古くなった理由、③自社の負担増を1行で計算する方法、④もう一つの期限である2割特例の終了、⑤2027年からの受け皿の違い(個人事業者と法人)を解説します。

この記事でわかること
・2026年10月1日から、免税事業者への支払いの控除割合が80%→70%、上限が10億円→1億円に変わること
・「10月から5割」という解説が、なぜ嘘ではないのに古いのか(数字ではなく時期がズレている
・免税事業者への支払額から、負担増を1行の計算式で出す方法(例えばの試算)
・2026年9月30日で終わる2割特例と、2027年からの受け皿(個人事業者の3割特例・法人の簡易課税)

2026年10月1日から何が変わるのか——8割控除が7割になり、上限が10億円から1億円になる

まず前提を1行で説明します。インボイス制度では、原則として適格請求書発行事業者(登録番号を持つ課税事業者)からの仕入れでないと、仕入税額控除ができません。ただし免税事業者などからの課税仕入れについては、制度開始から一定期間、控除割合を段階的に引き下げながら経過措置として控除を認めています。この経過措置の割合とスケジュールが、2026年度税制改正で見直されました。

期間改正前の予定改正後
2023年10月〜2026年9月80%80%(変更なし)
2026年10月〜2028年9月50%70%
2028年10月〜2029年9月50%50%
2029年10月〜2030年9月0%(ここで終了の予定だった)50%
2030年10月〜2031年9月30%
2031年10月以降0%(控除不可)

8割控除は2026年9月で終わる——次は7割、ゼロになるのは2031年10月

2023.102026.102028.102030.102031.10免税事業者からの仕入れで控除できる割合は、2年ごとに下がる出所:国税庁「令和8年度税制改正特集」より作成

表の右端が示すとおり、経過措置がゼロになる時期そのものが2029年10月から2031年10月へ、2年間延長されました。ゼロになる時期が延びた一方で、直近の割合(2026年10月〜2028年9月)は改正前の予定より20ポイント高い70%になっています。つまり「延びたが、下がり方も緩やかになった」というのが2026年10月からの変更の中身です。

もう1つの変更が、控除限度額です。一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年またはその事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、その超えた部分は経過措置の適用を受けられなくなりました。この見直しは2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。免税事業者からの仕入れが多い業種(下請け構造の外注費・フリーランスへの支払いが多い業種など)では、この上限が新たに効いてくる可能性があります。

「10月から5割になる」と書いた解説が今も多い理由——数字ではなく時期がズレている

ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。「2026年10月から控除は5割になる」という記述を見かけても、それはデタラメではありません。改正前の予定では、2026年10月から3年間の控除割合はたしかに50%でした。上の表の「改正前の予定」列にある数字そのものです。

2026年10月時点の控除割合——改正前の予定と、実際に決まった割合

70%改正後(実際)50%改正前の予定差 20ポイント同じ2026年10月でも、20ポイント違う。古い解説はここで止まっている出所:財務省「令和8年度税制改正の大綱」・国税庁「令和8年度税制改正特集」より作成

問題は、制度が改正されたのに、改正前の予定を前提に書かれた説明がそのまま残っていることです。改正後は、2026年10月からの2年間は70%で、50%になるのは2年遅れて2028年10月からです。同じ「50%」という数字は、いまも制度の中に存在します——ただし、それが現れる時期が2年ずれました。制度の解説記事の中には、改正前に書かれたまま更新されていないものが一定数あります。数字を検索して最初に見つけた記事をそのまま信じると、この2年のズレに気づけません。「いつ時点の情報か」を必ず確認することが、この制度を正しく読むための最初の一歩です。自社の仕入計画や資金繰りをこの数字で見直したい場合は、無料のAI導入診断・無料相談で現状を整理することもできます。

同じように「時期のズレ」がコスト計画を狂わせる話は、最低賃金の引き上げでも起きています。最低賃金2026年度はいつから・いくら?47都道府県別の想定時給と発効日の記事でも、「10月から一律に上がる」という思い込みが、実際の発効日とずれるケースを解説しています。

いくら増えるのか——免税事業者への支払額から1行で出す

ここからは実績ではなく、例えばの試算です。控除割合が下がると、免税事業者への支払いのうち控除できない部分(=自社の新たな負担)が増えます。負担増は次の式で概算できます。

計算式(例えば):免税事業者への年間支払額(税込)× 10/110 ×(減る控除割合のポイント数)

80%から70%へ、10ポイント下がる場合(2026年10月〜2028年9月)で試算すると、次のようになります。

8割から7割で増える自社負担(例えばの計算)

税込100万円9091円税込300万円27273円税込500万円45455円← 例えばこの水準なら年4.5万円税込1000万円90909円免税事業者への年間支払額(税込)×10/110×10ポイント。500万円なら年4.5万円出所:控除割合は国税庁「令和8年度税制改正特集」。金額は例示のための試算

免税事業者への年間支払額(税込)が500万円の会社なら、80%→70%の変化だけで年間約45,455円が新たな自社負担になる計算です。割合で言うと、支払額の約0.9%にあたります。さらに2028年10月に50%まで下がった段階(80%比で30ポイント減)では、税込500万円の支払いに対して約136,364円、支払額の約2.7%が新たな負担になる計算です。これらはあくまで「例えば」の試算であり、実績の数字ではありません。実際の負担は、免税事業者との取引額・取引先の数・自社の利益率によって変わります。

もう一つの期限——2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終わる

2026年10月にはもう1つ、見落とされやすい期限があります。2割特例(適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模な事業者が、売上税額の2割だけを納めればよいという制度でした。この2割特例は、2026年9月30日までの日の属する課税期間で終了します。以降の課税期間には使えません。

2割特例が終わったあとの受け皿として新設されたのが、後述する3割特例です。両者の違いを整理すると次のとおりです。

項目2割特例3割特例
対象免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者個人事業者のみ
対象となる期間2026年9月30日までの日の属する課税期間まで令和9年分・令和10年分(2027年分・2028年分)
納付税額の計算売上税額の2割を納付消費税額から7割を控除し、売上税額の3割を納付
主な要件免税事業者から適格請求書発行事業者になったこと 等①個人事業者 ②基準期間の課税売上高1,000万円以下 ③インボイス発行事業者の登録 ④免税事業者が課税事業者になった課税期間に限る ⑤確定申告書に付記
法人の可否可(個人・法人問わず)不可

2割特例を使ってきた事業者にとって、2026年9月30日を含む課税期間が最後のチャンスです。次にどの制度へ移るかは、個人事業者か法人かで分かれます。

個人事業者は3割特例、法人は簡易課税——2027年からの受け皿は分かれる

その受け皿として令和8年度税制改正で新しく設けられたのが3割特例(新設・小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置)です。個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年分・令和10年分(2027年分・2028年分)の消費税申告について、課税標準額に対する消費税額から7割を控除することで、納付税額を売上税額の3割にできる制度です。適用には、①個人事業者であること、②基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること、③インボイス発行事業者の登録を受けていること、④免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと、または課税事業者選択届出書の提出により事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限ること、⑤確定申告書にその旨を付記すること、という5つの要件を満たす必要があります。

3割特例は個人事業者だけの制度です。法人は対象外です。国税庁のリーフレットの図でも、法人(12月決算の例)の令和9年12月期は「3割特例適用不可」と明示されています。

2割特例が終わったあと、どこに入るか

個人・1000万円以下3割特例(27・28年分)法人・5000万円以下簡易課税へ移行検討個人・1000万円超3割特例は使えない法人・5000万円超原則課税で計算個人事業者/法人売上高の大小3割特例は個人事業者だけ。法人の受け皿は簡易課税の届出期限の特例出所:国税庁「令和8年度税制改正特集」より作成

法人の受け皿として見直されたのが、簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例です。2割特例・3割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税制度を適用できます。この見直しは、翌課税期間が2026年10月1日以後に終了する課税期間である場合に適用されます。通常、簡易課税制度選択届出書は「適用を受けたい課税期間が始まる前日まで」に出す必要がありますが、この特例では事後的に、翌課税期間の申告期限までさかのぼって選べる形になります。

簡易課税制度そのものは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間が対象です。みなし仕入率は、卸売業(第1種)90%、小売業・飲食料品の譲渡に係る農林漁業(第2種)80%、農林漁業(飲食料品の譲渡を除く)・鉱業・建設業・製造業・電気/ガス/熱供給/水道業(第3種)70%、第1・2・3・5・6種以外(第4種)60%、運輸通信業・金融保険業・サービス業(飲食店業を除く。第5種)50%、不動産業(第6種)40%と業種ごとに定められています。選択すると原則として2年間は継続適用が必要な点にも注意が必要です。

自社の取引先に免税事業者が何社いるかを確かめる方法

ここまでの制度は、いずれも「免税事業者への支払いがどれだけあるか」を自社が把握していることが前提になります。しかし、支払う側から見ると、これは思ったより簡単ではありません。

自社の請求書実務での気づき:私たちは、自社(NGraph・LION Enterprise)の請求書をスクリプトで生成しており、登録番号(Tから始まる番号)を必ず載せる形にしています。一方で、受け取る側に回ったときに気づいたのは、取引先の請求書に登録番号が書かれていないとき、それが「免税事業者だから記載が無い」のか「課税事業者だが単に書き漏れている」のかは、請求書だけを見ても判別できないということです。どちらの場合も見た目は同じ「番号の無い請求書」で、国税庁の公表サイトで検索して確認するまでは確定しません。仕入税額控除の経過措置は、この「相手が免税事業者かどうか」の判定が出発点になる制度です。

会計ソフトへの入力や請求書の整理そのものをAIに手伝わせる方法は、経理業務でAIに任せられること・任せられないことの記事でも解説しています。判定作業は最終的に人の確認が必要ですが、確認の手順自体は次のように整理できます。

確認することどこを見るか次にやること
登録番号の記載受け取った請求書・領収書のT番号欄番号が無ければ次の行へ
番号の実在性国税庁「適格請求書発行事業者公表システム」検索してヒットしなければ、その時点で適格請求書発行事業者としての登録は無い
少額かどうかその取引が税込1万円未満か少額特例の対象なら、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる(2023年10月〜2029年9月30日の取引)

よくある失敗・NGパターン5つ

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よくある質問

2026年10月から免税事業者への支払いにかかる仕入税額控除はどう変わりますか?

2026年10月1日から2028年9月30日までの控除割合は70%です。改正前の予定では2026年10月から3年間50%へ下がる予定でしたが、改正でこの期間は70%に引き上げられました。その後、2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月以降は控除できなくなります。

「2026年10月から控除は5割になる」という説明を見ましたが、正しいですか?

2026年10月時点の割合としては、いまは誤りです。50%は改正前の予定で、2026年10月からの3年間に適用される数字でした。改正後は、2026年10月からの2年間は70%で、50%になるのは2028年10月からです。「5割」という数字自体は改正の過程に実在しましたが、時期がずれたまま残っている解説があります。

控除の上限額(1億円)はどんな取引に影響しますか?

一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年またはその事業年度で1億円を超える場合、その超えた部分は経過措置の対象外になります。改正前の上限は10億円でした。この見直しは2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例はいつまで使えますか?

2026年9月30日までの日の属する課税期間が最後です。それ以降に開始する課税期間には適用されません。

個人事業者ですが、2割特例が終わったあとはどうすればいいですか?

基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス発行事業者としての登録などの要件を満たせば、令和9年分・令和10年分(2027年分・2028年分)は3割特例を使え、納付税額を売上税額の3割にできます。確定申告書にその旨の付記が必要です。

法人にも3割特例は使えますか?

使えません。3割特例の対象は個人事業者に限られます。法人は、簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例を使って、翌課税期間から簡易課税制度へ移行できるかを検討するのが現実的な選択肢です。

まとめ

2026年10月1日から、免税事業者への支払いに使える仕入税額控除の経過措置は80%から70%になり、対象になる仕入額の上限も10億円から1億円に下がります。「10月から5割になる」という解説がいまも残っているのは、改正前の予定を前提に書かれたまま更新されていないためです。50%という数字自体は、2028年10月から実際に訪れます。あわせて、2026年9月30日を含む課税期間で終わる2割特例、2027年からの受け皿となる個人事業者向けの3割特例、法人が検討すべき簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例も、時期を混同しやすいポイントです。具体的な適用可否や税額の判断は、顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。まずは、自社が免税事業者へどれだけ支払っているかを、この記事の確認手順(登録番号の記載→実在性の確認→少額かどうか)で洗い出すところから始めることをおすすめします。

制度の数字を、自社の資金繰りにどう当てはめるかから一緒に整理します。

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参考(一次情報):
・国税庁「令和8年度税制改正特集」(インボイス制度特設サイト)
・国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年4月・令和8年5月改訂)
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)
・国税庁 タックスアンサー「No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
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