省力化投資補助金は生成AIの月額料金を補助しない——8月18日開始の第8回と、対象になるAIの条件
2026.08.17 夕 | 株式会社NGraph
省力化投資補助金〈一般型〉の第8回公募が、明日8月18日に始まります。9月中旬に申請受付が始まり、10月中旬に締め切られる予定です。この制度は「オーダーメイド性のある多様な設備やシステムを導入可能」で「最大1億円を補助」するとうたわれる一方、必ず満たさなければならない条件が1つあります。税抜きで単価50万円以上の機械装置等の設備投資を、必ず1つ以上含むことです。ところが中小企業基盤整備機構(中小機構)が2026年3月に公表した実態調査では、AIを導入済みの企業のうち82.6%が使っているのは生成AI——多くは月額数千円のプランです。この記事では、公募要領の必須要件と実態調査の数字を突き合わせ、いま何を動かすべきか、対象になるAIとならないAIの線引きを解説します。
・第8回は8月18日公募開始。9月中旬受付・10月中旬締切予定。本文の数字は第7回公募要領に基づきます
・補助上限額が「最大1億円」から「750万円」まで割れる理由
・必須要件「単価50万円以上の設備投資」に、生成AIの月額料金がなぜ当てはまらないか
・対象になるAI・ならないAIの判定表と、成長率・最低賃金の要件
第8回は8月18日公募開始——日程と、いま動かすべき1つ
中小企業省力化投資補助事業〈一般型〉の公式サイトは、2026年8月17日時点で第8回公募のスケジュールをこう告知しています。8月18日に公募が始まり、9月中旬に申請受付が始まり、10月中旬に締め切られる予定です。詳細は後日発表するとのことです。第7回公募は2026年7月31日17時に締め切られたばかりで、間を置かずに第8回が始まります。
この記事で扱う数字は、2026年6月16日更新の第7回公募要領に基づいています。第8回の公募要領は、本稿の執筆時点ではまだ出ていません。公表日そのものは告知されておらず、細部は第8回で変わる可能性があります。
公募要領がまだ出ていない段階でも、今日から動かせることが1つあります。公式サイトが繰り返し注意を促しているGビズIDプライムアカウント、つまり国の補助金や行政手続きの電子申請に使う共通アカウントの取得です。取得には一定の期間がかかるため、未取得の方は早めに手続きを進めるよう公式サイトは呼びかけています。公募要領を待たずに準備できる、数少ない項目です。
「最大1億円」と「750万円」はどちらも公式——数字がズレる理由
公式サイトは一般型の特徴を「オーダーメイド性のある多様な設備やシステムを導入可能」「最大1億円を補助」「ハード・ソフトを自由に組み合わせ可能 事業全体を一体的に支援」「公募回制」と説明しています。一方で、公募要領の補助上限額の表を見ると、従業員5人以下の会社の上限は750万円です。どちらも同じ制度について公式に発表された数字であり、間違いではありません。
ズレの正体①——従業員数区分
補助上限額は、従業員数の区分ごとに5段階に分かれています。
「最大1億円」に届くのは従業員101人以上だけ
「最大1億円」に届くのは、従業員101人以上の会社だけです。従業員5人以下なら750万円、6〜20人なら1,500万円というように、規模が小さいほど上限額も小さくなります。「最大1億円」という見出しだけを見て自社にも同じ枠があると考えると、実際に使える上限額との差に驚くことになります。
ズレの正体②——カッコ内は特例適用時
もう1つの重なりが特例です。公募要領の上限額表の「カッコ内」は、大幅賃上げ特例を適用した場合の金額です。従業員5人以下なら、通常750万円の上限が、特例適用時は1,000万円まで引き上がります。引き上げ額は、5人以下250万円、6〜20人500万円、21〜50人1,000万円、51〜100人1,500万円、101人以上2,000万円です。特例の適用には、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を基本要件の+3.5%からさらに+2.5%以上上乗せして合計+6.0%以上にし、事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+50円以上にするという条件を満たす必要があります。
つまり「最大1億円」は従業員規模が最大かつ特例を使わない場合の上限、「750万円」は従業員規模が最小の場合の上限で、どちらも同じ表の別の行を指しているだけです。自社が使える上限額を知るには、まず自社の従業員数がどの区分に入るかを確認することが最初の一歩になります。
上限額とは別に、実際に補助される金額は補助率で決まります。補助率は中小企業で1/2、大幅賃上げ特例を適用すると2/3、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3です。例えば従業員10人の会社が、税抜1,000万円の設備とシステムを導入した場合、補助率1/2なら補助金は500万円、自己負担も500万円です。6〜20人の上限1,500万円には届いていないので上限は効きません。同じ会社が小規模事業者に当たるなら、補助率2/3で補助金は約666万円になります。
自社の上限額・補助率と、月額のAI利用料をこの補助金にどう位置づけられるかを確認したい方は、無料のAI導入診断で整理できます。
必須は「単価50万円以上の設備」——AIの月額料金がここで落ちる
ここからが本題です。補助上限額がいくらであっても、その前に満たさなければならない条件があります。公募要領は対象経費を7区分に分け、そのうち1区分だけを必須としています。
| 区分 | 必須・任意 | 上限 | 中身の要点 |
|---|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 必須 | — | 専ら本事業に使う機械・装置・工具・器具の購入・製作・借用/専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築・借用/それらと一体の改良・据付け。税抜き単価50万円以上の設備投資を1つ以上含むこと |
| 運搬費 | 任意 | — | — |
| 技術導入費 | 任意 | ▲対象経費総額の1/3 | — |
| 知的財産権等関連経費 | 任意 | ▲対象経費総額の1/3 | — |
| 外注費 | 任意 | ◎対象経費総額の1/2 | — |
| 専門家経費 | 任意 | ◎対象経費総額の1/2・1日5万円 | 大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・医師は1日5万円以下、大学准教授・技術士・中小企業診断士・ITコーディネータは1日4万円以下。応募時に事業計画書の作成を支援した者は対象外 |
| クラウドサービス利用費 | 任意 | — | 専ら本事業で使うクラウド・WEBプラットフォームの利用費のみ。自社の他事業と共有する場合は対象外。月額・年額の利用料はここに計上する |
月額料金は「借用」に該当しない
ここで、多くの中小企業が実際に使っている生成AI——月額数千円のプランに契約して使う形——が、必須要件とどう噛み合うかを確認します。公募要領はこう明記しています。「ソフトウェア・システムの月額・年額利用料は『借用』には該当しません」。生成AIの月額プランに契約するだけでは、必須である機械装置・システム構築費の「借用」にも当たらず、この区分の対象経費として計上できません。月額・年額の利用料は、対象経費7区分のうち任意のクラウドサービス利用費の範囲で扱われます。
「単に汎用設備を単体で導入する事業」は対象外
公募要領はもう1つ、念押しの一文を置いています。「単に汎用設備を単体で導入する事業については、本事業の対象とはなりません」。生成AIの多くは、特定の1社のためではなく、誰でも同じ画面・同じ機能を使える汎用のサービスです。この一文は、汎用サービスを単体で契約する使い方が、この補助金の狙いとそもそも噛み合わないことを示しています。クラウドサービス利用費として計上できるのは専ら補助事業のために利用する契約だけで、自社の他事業と共有する場合は対象外です。パソコン・タブレット端末・スマートフォンの本体費用や、サーバーの購入費・レンタル費も対象外になります。
中小企業が実際に入れたAIは、その必須要件と噛み合っていない
実際に中小企業がどんなAIを使っているかを見ます。中小機構は2026年3月に「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」を公表しました。調査期間は2025年11月17日から12月12日、対象は全国の中小企業10,000社へのWebアンケート、業務委託先は東京商工リサーチです。AI導入率は20.4%で、全社的導入と一部業務導入を合わせた数字、有効回答は1,647社です。検討中の企業を含めると39.0%に達します。
導入済み企業が入れたAIの8割は、設備を伴わない生成AI
導入済み企業(n=322)が実際に使っているAIサービスの内訳を見ると、生成AIが82.6%で圧倒的に多く、2位の音声認識・音声対話AIは29.8%と大きく引き離されています。3位は画像認識AIの11.2%、4位は需要予測AIの8.1%、5位は異常検知AIの4.3%です。導入目的は業務効率化・作業時間の短縮が87.0%で最多、効果としても業務効率化・作業時間の短縮を実感している企業が83.2%に上ります。
中小企業が欲しいのは「導入費用の助成」
同じ調査で、導入を推進するために必要な公的支援を尋ねた設問では、「導入費用などの助成」が77.9%で1位でした。2位は導入事例などの情報提供で70.5%、3位は従業員向けの教育・研修で67.7%、4位は試行導入などの機会で61.3%、5位は専門家の派遣や導入相談で59.8%と続きます。中小企業が公的支援に一番望んでいるのは、いま実際に使っている生成AIのような月額サービスへの費用助成です。
ここで、前のセクションで確認した必須要件と重ね合わせます。導入済み企業の82.6%が使うAIは生成AI、つまり月額の利用料で使う汎用サービスです。そして必要な公的支援の1位は導入費用などの助成でした。一方、この補助金が必須にしているのは単価50万円以上の設備投資で、月額利用料は借用に該当しません。企業が実際に使い、助成してほしいと考えているAIの形と、この補助金が必須要件として求めるAIの形は、噛み合っていません。これは中小機構自身の公募要領と実態調査、どちらの発表元も指摘していない組み合わせです。2つの一次情報を突き合わせて初めて見えてきます。
では、どのAIなら対象になるのか——対象/対象外の判定表
次に「どのAIなら対象になるのか」を整理します。
対象になるのは「専用に作ったAI」だけ
右上の象限、つまり自社専用に構築したAIシステム、または設備と一体になった専用ソフトだけが、単価50万円以上の設備投資を満たせます。右下の専ら本事業のために使うクラウド利用費は、右上の設備投資があって初めて任意経費として上乗せできます。左側の2象限、つまり汎用のまま使うものは単体では対象になりません。
ケース別に見る対象・対象外
| ケース | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 生成AIの月額プラン単体 | 対象外 | 月額・年額利用料は「借用」に該当しない。単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外 |
| 単価50万円以上で自社専用に構築したAIシステム | 対象 | 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、単価50万円以上で必須要件を満たす |
| 設備と一体で導入する専用ソフト | 対象 | 機械装置・システムと一体で行う改良・据付けとして計上可 |
| 既存システムのバージョンアップ | 原則対象外 | 既に導入されている既存システム・ソフトウェアのバージョンアップ・アップデート・改修費用は対象外 |
| 新規導入システムと連携するための既存側の改修 | 対象 | 新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用は対象 |
| 自社の人員で作る場合の人件費 | 対象外 | 事業にかかる自社の人件費・自社人員による開発・改修の人件費は計上不可 |
| 汎用PC・タブレット・スマホ本体 | 対象外 | パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象外 |
| 専ら本事業で使うクラウド利用費 | 任意経費として対象 | 専ら補助事業のために利用するクラウドサービス・WEBプラットフォームの利用費は対象。自社の他事業と共有する場合は対象外 |
費用より先に落ちるのは、成長率と最低賃金の要件
必須要件の設備投資を満たしても、審査にはもう1つの関門が控えています。3〜5年の事業計画期間の中で、次の基本要件をすべて満たす計画を立てる必要があります。
| 要件 | 数値 | 未達のとき |
|---|---|---|
| 労働生産性の年平均成長率 | +4.0%以上 | 達成率に応じて補助金の返還を求められる |
| 1人当たり給与支給総額の年平均成長率 | +3.5%以上 | 同上 |
| 事業場内最低賃金 | 事業実施都道府県の最低賃金+30円以上、毎年 | 同上 |
| 従業員21名以上の一般事業主行動計画公表 | 交付申請時までに「両立支援のひろば」へ公表、掲載に2週間程度 | 交付申請時までに完了していないと申請できない |
| 応募時の従業員数 | 0名は応募不可 | 応募自体ができない |
| 任意の大幅賃上げ特例 | 給与総額+6.0%以上・最低賃金+50円以上 | 満たさなければ通常の上限額が適用される |
| 任意の最低賃金引き上げ特例 | 2024年10月〜2025年9月に該当従業員が30%以上の月が3か月以上 | 満たさなければ特例の対象外 |
従業員21名以上の場合は、交付申請時までに「両立支援のひろば」へ次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表しておく必要があり、掲載には2週間程度を要します。1人当たり給与支給総額の年平均成長率は、日本銀行が定める物価安定の目標に1.5%を上乗せした+3.5%以上が基準です。目標を達成できなかった場合は、達成率に応じて補助金の返還を求められます。ただし再生事業者は、基本要件未達による返還を免除されます。
最低賃金+30円以上という要件は、都道府県ごとに毎年決まる最低賃金の水準に連動します。当ブログでは最低賃金2026年度はいつから・いくら?47都道府県別の想定時給と発効日で都道府県別の動きを解説しています。自社の事業場内最低賃金がこの補助金の要件を満たしているかを確かめる際に参考にしてください。
よくある失敗——NGパターン5つ
- ①交付決定前に発注してしまう。交付決定前に発生した経費は、いかなる理由であっても対象外です。事前着手は一切認められません。
- ②既存システムの改修だけで組む。既存システム・ソフトウェアのバージョンアップ・改修費用は原則対象外です。新規導入システムと連携するための改修費用は対象ですが、既存側だけの改修は落ちます。
- ③クラウド費を他事業と共用する。クラウドサービス利用費は、専ら補助事業のために利用する契約だけが対象です。他事業と共有する契約は対象外になります。
- ④GビズIDが間に合わない。GビズIDプライムアカウントの取得には一定の期間を要します。公募要領を待ってから動くと、9月中旬予定の申請受付開始に間に合わない恐れがあります。
- ⑤汎用PC・タブレットを主役にする。パソコン・タブレット端末・スマートフォンの本体費用は対象外です。必須要件の「機械装置等の設備投資」には数えられません。
自社の計画がこの必須要件に当てはまるかを一緒に確認したい方は、無料相談・無料AI診断からご相談ください。
よくある質問
生成AIの月額プランだけで申請できますか
できません。公募要領は「ソフトウェア・システムの月額・年額利用料は『借用』には該当しません」と明記しており、必須の機械装置・システム構築費には数えられません。月額利用料は任意経費のクラウドサービス利用費として計上できますが、単価50万円以上の設備投資という必須要件は別に満たす必要があります。
自社で作ったAIシステムは対象になりますか
自社専用に構築した情報システムやソフトウェアは、必須の機械装置・システム構築費の対象です。ただし、その開発・改修を自社の人員が行う場合の人件費は計上できません。外注費や専門家経費など、別の区分での計上を検討する必要があります。
今使っているシステムにAI機能を足すのは対象ですか
既存システムのバージョンアップ・改修は原則対象外です。ただし、新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用は対象になります。既存システム単体の機能追加か、新規導入システムとの連携かで扱いが変わります。
補助金が決まる前に発注してもいいですか
できません。交付決定前に発生した経費は、いかなる理由であっても対象外です。事前着手は一切認められていません。
従業員が自分1人でも申請できますか
応募申請時に従業員数が0名の場合は応募できません。1名以上であれば要件の対象になりますが、補助上限額は5人以下の区分が適用され、750万円、特例適用時は1,000万円です。
第8回の公募要領はいつ出ますか
公式サイトの告知によれば、第8回公募は2026年8月18日に開始し、詳細は後日お知らせするとされています。公募要領そのものの公表日は告知されておらず、2026年8月17日である本稿の執筆時点ではまだ公表されていません。本文の数字はすべて、2026年6月16日更新の第7回公募要領に基づくものです。
まとめ
省力化投資補助金〈一般型〉の第8回公募は、明日8月18日に始まります。「最大1億円を補助」という見出しと「750万円」という上限額は、従業員数区分と特例の有無が重なっているだけで、どちらも同じ制度の正しい説明です。そして最も見落とされやすいのは、必須要件である「単価50万円以上の設備投資」が、いま多くの中小企業が実際に使っている生成AIの月額プランとは噛み合わないという構造です。中小機構自身の実態調査では、導入済み企業の82.6%が生成AIを使い、必要な公的支援の1位は導入費用などの助成で77.9%でした。中小企業が欲しい支援の形と、この補助金が必須にする設備投資の形は、いまズレています。対象になるのは、自社専用に構築したAIシステムや、設備と一体になった専用ソフトです。汎用の月額プランを単体で申請することはできません。公募要領はまだ公表されていないため細部が変わる可能性はありますが、GビズIDプライムアカウントの取得だけは今日から進められます。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第7回公募)」(2026年6月16日更新)
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金〈一般型〉公式サイト」(お知らせ・2026年8月17日時点で掲載を確認)
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表。調査期間2025年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社にWebアンケート配布、業務委託先は東京商工リサーチ)
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