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社内の問い合わせにAIを入れた会社は5割、効果実感4割強——議事録と違い、誰かが答えを書かないと始まらない

2026.09.08 夕 | 株式会社NGraph 社内の問い合わせにAIを入れた会社は5割、効果実感4割強——議事録と違い、誰かが答えを書かないと始まらない

社内からの問い合わせに答える仕事にAIを取り入れた企業は50.9%ですが、効果を実感したのは42.7%にとどまります。総務省「令和8年版情報通信白書」(図表Ⅰ-2-1-7)を見ると、議事録・メール作成補助は活用計71.2%に対し効果実感72.3%とむしろ数字が上がっており、社内ヘルプデスクだけが活用より効果が低い方向にずれているのです。同じ調査からは、従業員が一人で始められる業務と、誰かが先に手を動かさないと始まらない業務のあいだに、はっきりした差があることも見えてきます。この記事では、社内の問い合わせにAIを任せても止まりやすい理由を担当者の側から3つに分解し、現場に入って先に何を決めておけば3か月後も回り続けるかを書きます。

この記事でわかること
・社内ヘルプデスクのAI活用が、なぜ議事録より低い方向にずれているか
・議事録と社内の問い合わせで、AIの効き方がどう違うか
・止めない設計の決めごとと、3か月後に残る成果物の形

社内の問い合わせにAIを入れた会社は5割、効果を感じたのは4割強

総務省「令和8年版情報通信白書」の図表Ⅰ-2-1-7は、14の業務類型ごとに、生成AIをどう活用しているかを6つの選択肢で尋ねています。社内ヘルプデスクでは、業務プロセスがAI中心に変更されている企業が11.9%、部署内の特定業務で活用している企業が20.7%、従業員が個人作業の効率化で活用している企業が18.3%で、この3つを合わせた活用計は50.9%でした。残りは未導入28.8%、わからない12.3%、該当業務なし8.0%に分かれます。

社内ヘルプデスクの活用状況は、「未導入」が最も多い28.8%

11.9%プロセス中心20.7%部署内活用18.3%個人活用28.8%未導入12.3%わからない8.0%該当業務なし3つの活用のしかたを合わせた活用計は50.9%、残りは未導入・わからない・該当業務なしに分かれる出所:総務省「令和8年版情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-7

同じ調査は、生成AIの活用効果を感じるかどうかも別の設問で尋ねています。効果を実感すると答えた割合は、社内ヘルプデスクで42.7%でした。活用計50.9%に対して8.2ポイント低く、この2つの設問はどちらも同じ回答者の集合に対する割合で、活用している人のうち何割が効果を感じたかという割合の割合ではありません。対して議事録・メール作成補助は活用計71.2%に対し効果実感72.3%で、1.1ポイントむしろ高く出ています。

効果を実感するのは議事録が突出、社内ヘルプデスクは2番手で42.7%

議事録・メール作成補助72.3%社内ヘルプデスク42.7%製造・生産39.8%研究・商品開発39.1%営業・販売37.5%マーケティング・広報36.6%カスタマーサポート33.8%経理・財務29.7%法務28.8%社内システム開発・運用26.3%調達25.9%人事23.5%経営20.1%上記の業務に当てはまらない業務8.8%生成AIの活用効果を実感する割合は、社内ヘルプデスクが議事録・メール作成補助に次ぐ2番手で42.7%出所:総務省「令和8年版情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-7

14の業務類型のうち、効果を実感する割合が最も高いのは議事録・メール作成補助の72.3%で、社内ヘルプデスクの42.7%はそれに次ぐ2番手です。使っている人の割合こそ低いものの、使った人が効果を感じる度合いそのものは、他の業務類型と比べて低いわけではありません。

議事録は社員が独りで始められる。社内の問い合わせは、誰かが作らないと始まらない

議事録・メール作成補助と社内ヘルプデスクの差が最もはっきり出るのは、従業員が個人作業の効率化で活用していると答えた割合です。議事録・メール作成補助は35.2%で14の業務類型の中で最も高く、社内ヘルプデスクは18.3%です。

個人作業の効率化で使えるのは議事録、社内ヘルプデスクは半分程度

35.2%議事録・メール作成補助18.3%社内ヘルプデスク差 16.9ポイント従業員が個人作業の効率化で活用していると答えた割合は、議事録・メール作成補助35.2%に対し社内ヘルプデスク18.3%出所:総務省「令和8年版情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-7

議事録は、会議に出た本人がその場で使い始められます。録音を自分でAIに読ませ、自分用のメモを作る。誰にも断らず、今日から一人で始められる作業です。一方、社内の問い合わせにAIが答えるには、まず答える中身が要ります。就業規則のどこに何が書いてあるか、経費精算の締め切りは何日か、備品はどこに発注するか——これらは、誰かが文章にして残していなければ、AIには読むものがなく答えられません。従業員が思い立って一人で始められる業務と、誰かが先に答えを作って置いておかなければ始まらない業務のあいだに、この記事の核になる差があります。

この差は、活用の内訳にも表れています。社内ヘルプデスクは、業務プロセスがAI中心に変更されている企業が11.9%で、14の業務類型の中で最も高い数字です。個人での活用は低いのに、プロセスの変更まで進んでいる企業の比率は最も高いという、一見ねじれた結果になっています。個人が思いつきで始められない業務だからこそ、始まるとしたら会社として仕組みを作るところから始まる、と読むこともできます。

総務省の同じ白書は、こうした汎用AIの活用のされ方について「汎用的なAIツールが導入されても一部の積極的な社員が活用するのみで、全社的な活用と効果創出に至らない可能性もある」と指摘しています。社内の問い合わせは、この「一部の積極的な社員」に任せる形がそのまま当てはまらない業務です。答えを書く担当者を決めないまま「AIを使っていい」と伝えるだけでは、議事録のように個人が始める動きにはつながりません。

同じ「バックオフィスのAI活用」が50.9%と73.4%に割れる理由

社内の問い合わせと同じ「バックオフィスのAI活用」を扱った別の調査では、もっと高い数字が出ています。中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月)に載った帝国データバンクの調査では、バックオフィス部門でAIを活用している事業者は73.4%です。総務省調査の社内ヘルプデスク50.9%と20ポイント以上の開きがありますが、これは同じ実態を指す数字ではありません。

中小企業のAI活用は、バックオフィス部門で最も進んでいる

バックオフィス部門73.4%営業・販売・顧客対応部門68.2%製造・生産管理・物流部門57.2%AI活用に取り組んだ事業者のうち、該当部門がある事業者に限った活用率出所:中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」(帝国データバンク調査・n=1,577/1,605/1,210・AI活用に取り組んだ事業者に限る・該当部門なしを除く)

2つの調査は、誰に何を聞いたかがそもそも違います。

調査誰に聞いたか何を聞いたか除外している回答
総務省「令和8年版情報通信白書」企業の回答者全体社内ヘルプデスクという業務類型でのAI活用状況無し(未導入・わからない・該当業務なしも含めて集計)
中小企業庁「中小企業白書」(帝国データバンク調査)省力化投資でAI活用に「取り組んだ」と回答した事業者バックオフィス部門でAIを活用しているか「該当部門はない」と回答した事業者

総務省の調査は、AIを使っていない企業も、わからないと答えた企業も含めた全回答者が母数です。中小企業庁が引く帝国データバンクの調査は、そもそも省力化投資でAI活用に取り組んだと答えた事業者だけを対象にし、そこからさらに「バックオフィス部門はない」と答えた事業者を除いています。母数をAI活用に前向きな事業者に絞ったうえで部門の有無まで揃えれば、活用率が高く出るのは自然です。50.9%と73.4%は、どちらも正しい数字でありながら答えている集団がまったく別なので、そのまま比べることはできません。調査の数字が母集団や設問で割れる話は、以前にも中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か——調査3本が割れる理由と、自社が入る数字の見分け方で扱った構図と同じです。

視点を広げると、何らかの業務で生成AIを利用していると答えた企業の割合は、総務省「令和7年版情報通信白書」の2024年度企業向け調査で55.2%、「令和8年版情報通信白書」の2025年度企業向け調査では86.4%まで伸びています。生成AIの活用方針を定めた企業の割合も、2024年度調査の49.7%から68.9%へ増えました。ただし、この方針の割合は、活用方針の設問で「わからない」と回答した対象を除いて集計されています。企業規模別では大企業74.0%に対し中小企業58.1%で、規模による差は残ります。

社内の問い合わせをAIに任せても止まる理由3つ

AIが社内の問い合わせに答える、とは、社内の資料を読み込んだAIに、社員が知りたいことを聞かせる仕組みを指します。答える中身さえあれば実現できそうに見えますが、実際に増えるのは、その中身を作り、直し、間違えたときに説明する担当者の仕事です。理由を3つに分けます。

覚える——答えの元になる文章を、誰かが最初に書く

AIは、社内のどこにも書かれていないことには答えられません。就業規則のような整った文書がある業務はまだしも、備品の発注先や、来客対応の順番、過去の判断の経緯といった問い合わせの多くは、担当者の頭の中にしかありません。AIに答えさせる前に、その中身を文章として書き出す作業が要り、しかもこれは一度書いて終わりではなく、制度や手順が変わるたびに書き直す仕事として残ります。

直す——AIの誤答を直すのは、書いた本人

AIが古い情報や、部分的にしか合っていない答えを返したとき、それを見つけて直すのは、たいてい元の文章を書いた担当者です。質問への回答という性質上、社員は答えを鵜呑みにしやすく、間違いに気づかれないまま広まるおそれもあります。直す仕事は、AIを入れる前には無かった新しい確認作業として、担当者に積み上がります。

説明する——誤答が広まったときの責任を、担当者が負う

AIの誤った回答をもとに社員が判断を誤ったとき、社内で説明を求められるのは、その情報を用意した担当者です。うまく答えられているときはAIの手柄として語られても、担当者の評価や給料が変わるわけではありません。使い方を覚えるのも自分、間違いを直すのも自分、失敗して聞かれるのも自分——この積み重ねが、担当者が積極的に動けない構造です。

総務省の白書は、生成AIの活用が効果創出まで進んだ先進企業について、事業部門の現場のニーズを起点に、DX推進部門がアイデア創出や技術的なアドバイス、セキュリティ対策、効果測定、学習機会の設定まで伴走支援していたと紹介しています。白書自身も「特に全社的にDXを推進する専門的な部門を擁する大企業においては」と書いており、この処方箋は、そうした専門部門を持つ会社が前提です。専門部門を持たない会社では、この伴走支援の役を誰が引き受けるかが、そのまま止まるか止まらないかの分かれ目になります。

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止めない設計——先に決める3つと、3か月後に残るもの

担当者の仕事を増やさない。これが止めない設計の一行目です。答える中身を書き、間違いを直し、失敗したときに説明する役目を、現場に入った外の人間が引き受けます。

先に決める3つ

止めない設計で最初に決めるのは3つです。1つ目は、どの問い合わせから始めるかです。就業規則や経費精算のように、すでに文章になっている業務から始め、担当者が新しく書き起こす範囲を最小にします。2つ目は、AIが答えられない質問をどこに逃がすかです。確信の持てない質問を担当者の画面に黙って出さず、人に取り次ぐ窓口をあらかじめ用意します。3つ目は、答えの中身を誰が更新するかです。制度が変わるたびに書き直す役目を、担当者の記憶ではなく、外の人間が持つ仕組みに乗せます。

3か月後に残っているもの

止めない設計が機能したとき、3か月後に現場に残っているのは、担当者が新しく覚えた操作ではありません。担当者が触らなくても答えが更新され続けている仕組みそのものです。

決めること誰が決めるか残るもの
最初に始める問い合わせ現場に入った外の人間すでに文書がある業務から始めた最初の型
答えられない質問の逃がし先外の人間が設計確信の持てない質問を人に取り次ぐ窓口
答えの更新役外の人間が引き受ける制度変更のたびに書き直される仕組み
誤答の責任外の人間が引き受ける担当者が説明を背負わない体制
同じ形は、自分たちの会社でも動かしている。私たちは、会社の決まりごとや案件の現在地、過去の決定を1か所のファイル群にまとめ、複数のAIがそこを読んでから作業を始める形で運用している。社内の問い合わせにAIが答える仕組みを、まず自分たちの会社で先に動かしている形だ。効いたのは文章を足したことではなく、答えの出どころを1か所に決めたことだった。同じ問いに違う答えが出る状態が消えた。うまくいかなかった点もある。記録は黙って古くなる。書いた時点では正しかった内容が、数か月後には現在と食い違っていることがあり、人が気づく形では運用が保たなかった。そこで、内容の再確認期限を機械が見張り、期限が切れたら公開の手前で止まる形に変えた。人の記憶に頼る運用をやめたことが、実際に効いた部分だ。

同じことは、社内の問い合わせにもそのまま当てはまります。担当者が最後まで持つのは、AIの答えを見て「これで送ってよいか」を判断する場面だけにし、答えの中身を書く作業や更新のルールは、外の人間が作った仕組みの側に残します。

費用の考え方と、業務改善助成金の対象になる形

止めない設計を作るには、費用がかかります。中小企業・小規模事業者が交付要件を満たして事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合、厚生労働省の業務改善助成金を使える場合があります。賃金の引上げも設備投資等も、これから実施するものが対象になる点は他の業務改善と同じです。社内の問い合わせに答える仕組みが対象経費に当たるかどうかは案件ごとに条件が変わるため、自社の場合の締切と対象になる経費の目安は業務改善助成金の計算機で確認できます。制度の詳しい条件は業務改善助成金は9月1日開始——締切は県ごとに最短30日、AIの月額料金が対象になる条件にまとめています。

よくある失敗——止める側に回りやすいNGパターン

AIを社内の問い合わせに入れた現場で、実際に起きやすい間違いを4つ挙げます。

自社がどのNGパターンに近いか気になる方は、無料相談・無料AI診断からご相談ください。

よくある質問

社内ヘルプデスクにAIを取り入れた会社は、本当に5割もありますか

総務省「令和8年版情報通信白書」の調査では、業務プロセスがAI中心に変更されている・部署内の特定業務で活用している・従業員が個人作業の効率化で活用している、の3つを合わせた活用計が50.9%です。3つの活用のしかたを一括りにした数字で、内訳には差があります。

効果を実感した企業が4割強なのに、活用計が5割というのはどういうことですか

この2つは別々の設問で、どちらも同じ回答者の集合に対する割合です。活用していると答えた人のうち何割が効果を感じたかという割合ではなく、活用計50.9%と効果実感42.7%を並べて差を見る数字だとお考えください。

なぜ議事録はうまくいって、社内の問い合わせは低いのですか

議事録は会議に出た本人が一人で始められる業務ですが、社内の問い合わせにAIが答えるには、答えの元になる文章を誰かが先に用意しておく必要があります。この違いは、従業員が個人作業の効率化で活用している割合の差(35.2%対18.3%)となって表れました。

中小企業庁の調査ではAI活用率が73.4%となっていますが、どちらが正しいのですか

どちらも正しい数字ですが、調査対象が違います。総務省の調査は全回答者を母数にしていますが、中小企業庁が引用した帝国データバンクの調査は、省力化投資でAI活用に取り組んだと答えた事業者のうち、該当部門がある事業者に絞って集計しています。

研修をすれば、社内の問い合わせのAI活用は定着しますか

研修を実施している事業者では、ITツール活用で「想定した効果が得られなかった」と答えた割合が8.7%で、実施していない事業者の19.1%より低くなります。ただし、それだけでは足りません。答える中身を誰が用意し、誰が更新するかという設計が別に要ります。

業務改善助成金は、社内の問い合わせに答えるAIの導入に使えますか

交付要件を満たせば、対象経費として使える場合があります。対象になるかどうかは案件ごとに条件が変わるため、自社の場合は計算機で確認してください。

3か月で成果が出なかったら、どうすればいいですか

まず、答えの中身を書き、更新する役目が担当者の記憶に残っていないかを確認します。残っているなら、止めない設計の決めごとに戻って見直します。

まとめ

社内の問い合わせにAIを任せても、答えの中身を書き、間違いを直し、失敗したときに説明するのが担当者のままなら、活用は個人の努力に頼ったまま広がりません。止めない設計の一行目は、担当者の仕事を増やさないことです。現場に入った外の人間が、どの問い合わせから始めるか、答えられない質問をどこに逃がすか、答えの更新を誰が持つかを決め、担当者の頭の中にあったものを仕組みへ移します。今日からできることは3つです。1つ目は、社内でよく聞かれる質問を1週間分書き出すこと。2つ目は、そのうちすでに文書になっている業務を1つ選ぶこと。3つ目は、業務改善助成金の計算機で自社の対象になる経費の目安を見ることです。

担当者の仕事を増やさない形で、社内の問い合わせを止めない設計にします。

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参考(一次情報):
・総務省「令和8年版 情報通信白書|生成AIの業務利用状況
・総務省「令和8年版 情報通信白書|AI導入・活用による効果創出のステップ
・中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月)
・総務省「令和7年版 情報通信白書|企業におけるAI利用の現状
・あわせて読む:AIが組んだシフトは、確定した後は本人の同意なしに直せない——止まる理由3つと、現場で回り続ける設計(当ブログ・2026年9月5日夕)
・あわせて読む:受発注の転記をAIに任せても、社員に渡した瞬間に止まる——3か月後も現場で回っている状態にするまでの設計(当ブログ・2026年9月4日夕)
・あわせて読む:中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か——調査3本が割れる理由と、自社が入る数字の見分け方(当ブログ・2026年9月3日夕)
・あわせて読む:業務改善助成金は9月1日開始——締切は県ごとに最短30日、AIの月額料金が対象になる条件(当ブログ・2026年8月24日夕)
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