AIにWebページを読ませると、取消線と折りたたみが消える——公式情報をAIに調べさせるときの4つの確かめ方
2026.10.07 ナレッジ | 株式会社NGraph
AIに公式サイトのページやお客様とのメールを読ませて調べさせると、人が画面で見ている情報の一部がAIに届かず、AIが「判別できない」「載っていない」と答えることがあります。この記事では、画面には出ているのにAIが受け取る文字からは落ちる場所の地図と、落ちたことに気づくための確かめ方を、自社で2か月のあいだに起きた4件の実例とあわせて書きます。厄介なのは、文字そのものは取れているため、答えを読んだ人が「確認できた」と受け取ってしまうことです。
・画面とAIが受け取る文字が食い違う場所と、自社で起きた4件
・AIが「無い」と答えたときの、別の経路での探し方
・日付・金額・条件を原本で確定する理由
・AIへの指示文に足せる3つの文
・明日やる1歩から1か月後までの最小実践パス
画面と、AIが受け取る文字の差を埋める
補助金の締切、取引先の料金表、お客様とのメールのやりとり。AIに「これを調べて」「まとめて」と頼む場面の元資料は、どれも人が画面で見る形で作られています。取消線で消した古い日付、クリックすると開く説明、途中を畳んだメールの一覧といった具合です。
AIがページを読むとき、画面そのものを見ているとは限りません。ページから文字だけを取り出して渡す仕組みを通した場合、文字として残らなかった装飾や、開くまで読み込まれない部分はAIに届きません。この記事で扱うのは、そのようにページの文字だけを取り出して読ませたときの話です。どのAI製品がどこまで読めるかという仕様の話は扱いません。
自社では2026年8月から10月までの間に、この差が原因の誤りが4件ありました。4件とも、日付や文字そのものは取れていました。落ちたのは、取消線、開閉、見出しと中身の対応といった構造です。この4件から、確かめ方を4つの原則にまとめ、「画面とAIの受け取りの差を埋める確かめ方」と呼ぶことにしました。
- 原則1:文字だけにすると落ちる場所は決まっている。その地図を持つ
- 原則2:「無い」は「ある」より強い主張。別の経路で探してから受け取る
- 原則3:日付・金額・条件は、まとめのページではなく原本で確定する
- 原則4:頼み方を変える
原則1:文字だけにすると落ちる場所の地図
自社で実際に起きたのは、次の4か所です。
| 落ちる場所 | 落ちるもの | 自社の実例 |
|---|---|---|
| 取消線 | 新旧の区別 | 補助金の締切 |
| 折りたたみ・タブ | 閉じた中身、見出しと中身の対応 | 補助金の締切 |
| メールスレッドの折りたたみ | 途中のメッセージ | 送迎手配のメール |
| 表の折りたたみ行 | 最初の数行の下に隠れた行 | AI会社の料金表 |
画像の中の文字、PDF、ログインが必要なページなど、ほかにも落ちる場所はあり得ます。ただし自社では起きていないので、この地図には載せません。
実録A 取消線は、新旧の日付を平たく並べる 2026年8月、ある補助金の公式サイトの公募スケジュールで、申請受付の締切が、取消線のついた旧日程と新日程の2つで書かれていました。旧が令和8年8月31日、新が令和8年9月30日です。ページの文字だけを受け取ったAIには取消線が届かず、2つの日付が同じ重さで並びました。AIは「新旧2つが併記されていて、どちらが確定か判別できない」と書き、その文が自社ブログの補助金記事に入りました。公募要領のPDFには新しい日付だけがはっきり書かれていたため、月次の見直しで見つけて訂正しています。
実録B 折りたたみは、見出しと中身を引き離す 同じ見直しで、別の補助金の締切ページでも起きました。1次から6次までの締切が1つずつ折りたたみのパネルになっていて、開いていたのは4次だけです。文字として取れたのは4次の日付だけでした。しかも「第何次」という見出しは、パネルの外にある開閉のボタン側に書かれていました。AIは4次の締切を「1次締切」として書きました。1次は5月12日で、すでに終わっています。閉じたパネルの中身は、開くまでページに読み込まれない作りで、ページの文字を全部取っても出てきません。
実録C メールの折りたたみは、途中の1通を1行にする 2026年8月、送迎手配の案件で、お客様とのメールのスレッドをAIに読ませました。スレッド表示は、最初と最後以外のメッセージを1行の抜粋に折りたたみます。AIはその抜粋を全文だと思って読み、お客様が途中のメールに書いていた便名を読み落としました。そのうえ別の案件の例から推測して、「お客様は便名を書いていない、誤記の疑いがある」と社内に報告しています。人がメールの原文の画面を見せて、初めて分かりました。
実録D 表の折りたたみ行は、最初の3行の下に隠れる 2026年10月、AI会社の料金ページで起きました。表の最初の3行の下に、残りの行が折りたたまれていたのです。自社はページの文字を根拠に「このモデルは料金表に載っていない」とブログに書いて公開し、公開後の最終確認で、ページの元データにそのモデルの行があることを見つけて訂正しました。
4件とも、AIの答えは整った文で返ってきました。文字が取れているので、読む側に「何かが欠けている」という感触が残りません。地図の役目は、この感触の代わりに、疑う場所をあらかじめ決めておくことです。
原則2:「無い」は「ある」より強い主張
AIが「載っていない」「書かれていない」「判別できない」と答えたとき、実際に起きているのは「受け取った文字の中には見つからなかった」という報告です。ところが読む側は、それを「存在しない」という事実として受け取りがちです。実録CとDは、この形でした。
「無い」と言われたら、別の経路で探してから受け取ります。経路は3つあります。
- ページ内検索で、その語が何件出るかを数える
- 折りたたみを全部開いた画面を、人が見る
- 原本のPDFや、メールの原文を開く
もう1つ、要約と抽出のどちらも単独では信用しません。実録Dでは、ページの文字を根拠にした抽出は「載っていない」と答え、同じページをAIの要約機能に読ませた結果は「載っている」で、こちらが正しい答えでした。要約が常に正しいわけではないので、片方を正解役にせず、食い違ったら原本で決めます。
資料に書かれていないことをAIに断定させない型は、社内資料を読ませる前に決めることで書きました。AIの報告をそのまま完了と受け取らない線の引き方は、「できました」を終わりと受け取らない設計と同じ線上にあります。
画面に見えていた情報も、開かないと出ない情報も、AIは正しい答えを返せなかった
縦軸の上は「画面に出ている」、下は「開かないと出ない」です。4件とも、原本や元の画面を見るまで誤りに気づけませんでした。
原則3:日付・金額・条件は、まとめのページではなく原本で確定する
実録Aで答えを決めたのは、公募要領のPDFでした。実録AとBの2件は、どちらも公式サイトのまとめのWebページ側で起きています。原本とは、公募要領のPDF、契約書、請求書そのものを指します。
日付、金額、条件の3つは、間違えると申請や支払いの判断が変わります。この3つが入った答えは、原本の該当ページを開いて確定するものです。確定したあとは、どの文書の何ページかを書き添えておきます。次に読む人が、同じ確認を最初からやり直さずに済みます。
原則4:頼み方を変える
落ちる場所が分かっていれば、AIへの指示文に1〜3文を足せます。そのまま使える形で挙げます。
- 「取消線・折りたたみ・タブがあれば開いて、見出しと値を対で返してください」
- 「見つからなかったものは『見つからなかった』と書き、『無い』とは書かないでください」
- 「日付と金額には、どの文書の何ページかを添えてください」
この指示でAIの誤りが防げるかどうかは、自社ではまだ確かめていません。狙いは、人が確かめる手間が減る場所を作ることです。3文目の添え書きがあれば、原本を開く人は見るページが分かります。2文目があれば、「無い」と「見つからなかった」が答えの中で区別され、原則2の経路に進む合図になります。
明日からの最小実践パス
| 段階 | 時期 | やること |
|---|---|---|
| 段階1 | 明日 | AIが「判別できない」「載っていない」と答えた箇所を1つ選び、元のページを人の目で開いて、取消線・折りたたみ・タブが無いかを見る |
| 段階2 | 1週間 | 上の3つの指示文を、AIに調べ物を頼むときの定型文に足す。日付と金額が入った答えには、文書名とページを添えてもらう |
| 段階3 | 1か月 | 公式情報を引いている資料があれば、その日付・金額・条件の行を、原本と1回突き合わせる |
段階3は、自社で実録AとBを見つけた方法と同じです。2026年8月の月次の見直しで、記事の日付を公式の情報に当て直したときに見つかっています。
どこでつまずくか
この確かめ方にも、弱いところがあります。
①文字が取れているので、「確認できた」と錯覚する 日付も金額も出ているため、何かが欠けているとは思えません。実録A〜Dは4件とも、そう思える状態で答えが返ってきました。
②落ちたものは、落ちたことが見えない AIの答えに「ここに取消線がありました」とは出ません。自社の4件で気づく手がかりになったのは、「無い」「判別できない」という答え、原本との食い違い、人が元の画面を見たこと、のどれかでした。
③要約と抽出の答えが割れたとき、どちらを信じるか迷う 実録Dでは要約が正しかったのですが、いつもそうとは言えません。迷ったら、原本で決めます。
原本まで当たるのは手間がかかります。だから、確定を求めるものを日付・金額・条件の3つに絞っています。
まとめ
AIに調べさせるのをやめる必要はありません。AIの答えが画面の何を受け取っていないかを、確かめる側が知っておけば足ります。
- ページの文字だけを取り出して読ませると、取消線、折りたたみ・タブ、メールスレッドの折りたたみ、表の折りたたみ行が落ちる。自社では2か月で4件起きた
- 数字や文字は取れているので、答えは整った文で返り、欠けたことに気づきにくい
- AIが「無い」「判別できない」と答えたら、ページ内検索、全部開いた画面、原本のいずれかで探してから受け取る
- 要約と抽出のどちらも単独では信用しない。食い違ったら原本で決める
- 日付・金額・条件は、まとめのページではなく原本で確定し、文書名とページを添える
- 指示文に3文を足して、確かめる手間が減る場所を作る。ただし、誤りが防げるとは確かめていない
NGraphでは、公式サイトや取引先の資料をAIに調べさせる業務に入り、画面とAIが受け取る文字の差を確かめる手順まで、現場の方と一緒に整えます。
NGraphでは、FDE型AI導入伴走支援を承っております。ご依頼は随時募集しています。
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くわしくはFDE型AI導入伴走支援のページへ。あわせて読みたい記事:AIの「できました」は、終わったという意味ではない/AIは、資料に書いていない条件まで断定する
・自社の4件は、2026年8月から10月の社内の記録によるものです。ページの文字だけを取り出して読ませたときの話で、特定のAI製品の仕様を述べるものではありません
・依頼先・案件名・個別の補助金名は、この記事では扱っていません
