同一労働同一賃金の2026年10月改正とは?明示事項の追加・過料10万円・手当9項目を解説
2026.09.02 夕 | 株式会社NGraph
2026年10月1日から、パート・有期雇用で働く人への労働条件の明示事項が1つ増えます。厚生労働省のリーフレットには「違反した者は10万円以下の過料に処されます」と明記されています。総務省の労働力調査(2026年4〜6月期平均・令和8年8月10日公表)によれば、非正規の職員・従業員は2,146万人ですが、この数字は勤め先での呼び名を集計したもので、法が保護する対象を決める物差しとは別物です。厚生労働省の一次情報から、何が変わり、過料の対象がどこにあり、自社のどの手当を点検すべきかを整理します。
・過料10万円の対象は「明示」であって「説明」ではないという、条文上の線引き
・自社で「パートさん」と呼んでいる人が、法の判定軸ではどこに入るか
・同一労働同一賃金ガイドラインの改正で点検対象になった手当・休暇9項目
2026年10月1日から、何が変わるのか
2026年10月1日、パート・有期雇用労働者に関するルールが3つ同時に変わります。3つとも令和8年4月28日に公布され、告示は令和8年厚生労働省告示第202号・第203号、省令は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則及び短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(令和8年厚生労働省令第87号)です。
1つ目は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号・以下「パート・有期法」)の施行規則にある明示事項の追加です。パート・有期法第6条第1項は、事業主が短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに、特定の事項を文書の交付などの方法で速やかに明示しなければならないと定めています。現行の明示事項は昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口の4つで、ここに「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」が加わります。
2つ目と3つ目は、同一労働同一賃金ガイドラインと雇用管理指針という2本の告示です。ガイドラインの改正は、正社員との待遇差を点検すべき手当・休暇の考え方を示すもので、後段で詳しく扱います。雇用管理指針の改正が示すのは、待遇の相違について説明を求められたときの説明方法です。次の表は、3つの改正の性格をまとめたものです。
| 改正項目 | 根拠 | 義務の強さ | 罰則の有無 |
|---|---|---|---|
| 明示事項の追加 | パート・有期法施行規則 | 法律上の明示義務・第6条第1項 | 10万円以下の過料・第31条 |
| ガイドライン改正 | 厚生労働省告示・令和8年4月28日公布 | 待遇差を点検する際の指針 | 罰則の定めなし |
| 雇用管理指針改正 | 厚生労働省告示・令和8年4月28日公布 | 説明を求められた際の対応指針 | 罰則の定めなし |
過料10万円がかかるのは「明示」であって「説明」ではない
パート・有期法が過料を定めているのは2か条だけです。第31条は「第六条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する」と定め、第30条は「第十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する」と定めています。第31条が挙げているのは第6条第1項、つまり事業主が短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときの明示義務です。
一方、待遇の相違を説明する義務を定めているのは第14条第2項です。「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに…考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない」。労働者が説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは、第14条第3項で禁止されています。第6条・第14条・第30条・第31条を並べると、10万円の過料の対象が「雇い入れ時に、説明を求められる旨を明示すること」であって、「求めに応じて実際に説明すること」そのものではない、という条文の位置関係が見えてきます。
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対象者は「パート」という呼び名では数えられない
総務省統計局の労働力調査(詳細集計)は、2026年4〜6月期平均を令和8年8月10日に公表しました。それによると、役員を除く雇用者5,878万人のうち、正規の職員・従業員は3,732万人で前年同期より23万人多く、非正規の職員・従業員は2,146万人で前年同期より33万人多い数字でした。非正規2,146万人の内訳は、パート・アルバイト1,528万人、契約社員265万人、労働者派遣事業所の派遣社員158万人、嘱託106万人、その他89万人です。契約社員は前年同期より5万人少なく、それ以外は増えています。
「非正規」2,146万人は、呼び名で5つに割れている
この調査の「非正規」という区分は、勤め先での呼び方を本人に答えてもらう調査です。ところがパート・有期法が対象を定める条文に、呼び名は一度も出てきません。第2条は、短時間労働者を「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」、有期雇用労働者を「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と定めています。判定の軸は所定労働時間と契約期間の2つで、社内で「パートさん」「契約社員」と呼んでいるかどうかは条文のどこにも関係しません。
対象を決めるのは、呼び名ではなく2つの軸
2つの軸を掛け合わせると4つの象限ができます。所定労働時間が通常の労働者より短ければ、契約期間が有期でも無期でも短時間労働者としてパート・有期法の対象です。所定労働時間が通常の労働者と同じでも、契約期間が有期であれば有期雇用労働者として対象に入ります。対象外になるのは、所定労働時間が同じで契約期間も無期の労働者だけです。この無期雇用フルタイム労働者について、改正の概要は「無期雇用フルタイム労働者等へのガイドラインの趣旨の波及」という項目を設けています。パート・有期法が適用される対象ではないものの、労働契約は均衡を考慮しつつ締結すべきものであり、その均衡の考慮に当たってはガイドラインの趣旨を考慮すべきことに留意する必要がある、と記載されています。対象外という区分は、何もしなくてよいという意味ではありません。
自社の従業員を判定するときは、次の表にある所定労働時間・契約期間・対象かどうかの3つの欄を、実際に埋めてみることから始まります。
| 社内の呼称の例 | 1週間の所定労働時間 | 契約期間 | パート・有期法の対象か |
|---|---|---|---|
| パート・アルバイト | 通常の労働者より短い | 有期・無期のいずれも | 対象 |
| 契約社員・嘱託 | 通常の労働者と同じ | 有期 | 対象 |
| 正社員・無期のフルタイムパート | 通常の労働者と同じ | 無期 | 対象外・ガイドラインの趣旨は考慮 |
ガイドラインに追加された9項目、自社の手当・休暇を点検する
同一労働同一賃金ガイドラインの改正で、正社員との待遇差を点検すべき手当・休暇として9項目が示されました。6項目が新規追加、3項目が記載の充実です。
| 項目 | 区分 | ガイドラインが示した考え方 |
|---|---|---|
| 賞与 | 記載の充実 | 賞与・退職手当の目的には労務の対価の後払い、功労報償等の様々な目的が含まれる。これらの目的が妥当するにもかかわらず、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められる可能性がある |
| 退職手当 | 新規追加 | 同上 |
| 無事故手当 | 新規追加 | 正社員と業務の内容が同一のパートタイム・有期雇用労働者には、正社員と同一の無事故手当を支給しなければならない |
| 家族手当 | 新規追加 | 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる労働者には、正社員と同一の家族手当を支給しなければならない |
| 住宅手当 | 新規追加 | 住宅手当が転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものである場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある労働者には、正社員と同一の住宅手当を支給しなければならない |
| 病気休職 | 記載の充実 | 正社員に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、相応に継続的な勤務が見込まれる労働者にも、正社員と同一の給与の保障を行わなければならない |
| 夏季冬季休暇 | 新規追加 | パートタイム・有期雇用労働者にも、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない |
| 褒賞 | 新規追加 | 褒賞が一定の期間勤続した労働者に付与するものである場合、正社員と同一の期間勤続した労働者には、同一の褒賞を付与しなければならない |
| 福利厚生施設 | 記載の充実 | 福利厚生施設の料金・割引率等の利用条件について、不合理と認められる待遇差を設けてはいけない |
ガイドラインには、このほかにもいくつかの考え方が追加されています。待遇差の解消についてガイドラインが求めているのは、正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善を図ることです。「正社員人材の確保や定着を図る」といった目的があっても、その目的だけで直ちに不合理ではないと当然に認められるものではありません。定年後継続雇用の有期雇用労働者についても、定年後継続雇用であることだけで直ちに不合理ではないと認められるものではないとされています。また、法第8条が待遇差の考慮要素として挙げる「その他の事情」について、職務の成果・能力・経験・合理的な労使慣行等という行政通達の具体例が、ガイドラインにも記載されるようになりました。
説明を求められる場面は、実際にはほとんど起きていない
厚生労働省の令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査は、個人調査として労働者本人に尋ねています。令和2年4月以降、中小企業は令和3年4月以降に、正社員との待遇の相違について実際に説明を求めたことがある人は、パートタイム・有期雇用労働者計で15.1%です。82.3%は説明を求めたことがないと回答しました。以下の数字は、すべてこの労働者側の回答です。
説明を求めたことがある割合は、有期フルタイムが最も高い
説明を求めたことがある割合は就業形態で差があり、有期雇用フルタイムが20.6%、有期雇用パートタイムが17.1%、無期雇用パートタイムが9.2%でした。求めたことがある人のうち、説明があって納得した人は計で79.7%、説明はあったが納得しなかった人は12.1%、説明してもらえなかった人は8.2%です。
説明を求めない理由の最多は「納得しているから」
説明を求めたことがない理由は、説明を求めたことがない労働者を100とした割合で見ると「納得しているから」55.8%が最も多く、「その他」14.0%、「説明を求めやすい雰囲気がないから」10.3%、「自分の労働条件に関心がないから」9.2%、「誰に説明を求めれば良いかわからないから」5.6%、「説明を求めると不利益な取扱いをされるおそれがあるから」2.6%と続きます。
同じ調査は、採用時等における待遇についての説明状況も聞いています。「説明があった」と答えた人は計で77.0%、そのうち「説明内容を理解した」人は74.1%、「特に説明はなかった」は15.9%でした。法令の認知度を尋ねた設問(事業主は求められた場合に待遇の決定基準の違いとその理由等を説明しなければならない、という内容の認知)では、「よく知っている」7.8%、「だいたい知っている」32.2%、「聞いたことはあるが、よくわからない」26.7%、「知らない」31.3%という結果でした。
この数字を「説明を求められることはほとんどないから備えなくても大丈夫」と読むのは早すぎます。説明を求めたことがない理由の2番目に多いのは「その他」、3番目は「説明を求めやすい雰囲気がないから」です。求めたことがある人でも、8.2%は「説明してもらえなかった」と回答しています。起きる頻度が低いことと、起きたときに答えを用意できることは別の話です。
中小企業での具体例
この記事のテーマである「呼び名と実体のズレ」は、私たち自身の運用でも起きたことがあります。
雇用区分の呼称にも、同じ構造があります。社内で「パートさん」と呼んでいる人が、法の判定軸である所定労働時間と契約期間ではどこに入るのかは、呼び名を見ただけでは分かりません。ラベルを付けた人の記憶に頼っている状態は、機械に検査させるまで気づけない、そこも同じです。
よくある失敗・NGパターン
同一労働同一賃金の改正でよく起きる勘違いを、5つ挙げます。
- ①説明を求められたら、その場で口頭だけで済ませようとする。雇用管理指針が示す説明方法は「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかです。口頭による場合は、説明に活用した資料等を交付することが望ましいとされています。
- ②明示は雇い入れ時だけだと思っている。厚生労働省のWebマガジンは、明示のタイミングを「パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたとき」としたうえで、「労働契約の更新時も含みます」と注記しています。
- ③「うちはパートと呼んでいないから対象外」と判断する。判定の軸は呼称ではなく、1週間の所定労働時間と契約期間の2つです。
- ④説明を求められない限り何もしなくてよいと考える。雇用管理指針は、求めがない場合であっても、労働契約の更新時等に分かりやすい資料を交付することや、説明を求めることができることを周知するといった対応を行うことが望ましいとしています。
- ⑤待遇差の解消を、正社員の待遇を下げる方向で進めようとする。ガイドラインが求めているのは、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善であって、正社員の待遇を下げることではありません。
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よくある質問
2026年10月1日から何が変わりますか
パート・有期法施行規則の改正で労働条件の明示事項が1つ増えるほか、同一労働同一賃金ガイドラインと雇用管理指針という2本の告示も改正されます。公布はいずれも令和8年4月28日で、施行は2026年10月1日です。
明示を怠るとどうなりますか
パート・有期法第6条第1項の規定に違反すると、第31条により10万円以下の過料に処されます。
説明を求められたのに説明しなかった場合も過料の対象ですか
パート・有期法が過料を定めているのは第30条と第31条の2か条で、第31条が挙げているのは第6条第1項、雇い入れ時の明示義務です。
自社の「パートさん」は法の対象になりますか
判定は呼称では決まりません。1週間の所定労働時間と契約期間の2つの軸で決まります。所定労働時間が通常の労働者より短い、または契約期間が有期であれば対象です。
説明を求められたときの説明方法は決まっていますか
雇用管理指針では「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかとされています。
ガイドライン改正で新しく点検対象になった手当は何ですか
退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞の6項目が新規追加、賞与・病気休職・福利厚生施設の3項目が記載の充実です。
まとめと、10月1日までにやること
2026年10月1日、パート・有期雇用労働者に関するルールが3つ同時に変わります。過料10万円の対象は、雇い入れ時と更新時に説明を求められる旨を明示することであって、求めに応じて実際に説明することそのものではありません。対象者を決めるのは社内の呼称ではありません。1週間の所定労働時間と契約期間の2つの軸です。ガイドライン改正では、正社員との待遇差を点検すべき手当・休暇として9項目が示されました。
10月1日までにやることは3つです。1つ目は、労働条件通知書のひな形に「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の項目と、相談窓口を追加すること。2つ目は、自社の従業員を所定労働時間と契約期間で洗い出し、対象者を確定すること。3つ目は、9項目の手当・休暇を自社の規程と照らし合わせ、正社員との待遇差がある場合はその理由を言葉にしておくことです。
自社の労働条件通知書と手当規程が、10月1日の改正に対応しているか一緒に確認します。
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無料で相談する・厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」(令和8年4月作成・リーフレットNo.11)
・厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項」(令和8年改正の概要)
・厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」(令和8年厚生労働省告示第202号・第203号/令和8年厚生労働省令第87号・令和8年4月28日公布)
・厚生労働省Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」(2026.08.03)
・厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」
・総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2026年(令和8年)4〜6月期平均」(令和8年8月10日公表)
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