AIのモデルには終了日がある——3社の予告期間は60日・3か月・6か月、自社コードに引退済みが10箇所
2026.09.24 夕 | 株式会社NGraph
2026年9月24日の今日、OpenAIのVideos APIとSora 2系のモデルが、提供の終了日を迎えました。2026年3月24日に予告してから、ちょうど6か月です。AIのモデルは性能が上がって自然に置き換わるものだと思われがちですが、実際は提供する会社が日付を決めて終了させるものです。Anthropic・OpenAI・Googleの3社はいずれも終了の予告ページを公開していますが、約束している中身は同じではありません。この記事では3社の一次情報を突き合わせたうえで、自社の本番コードを数えたところ見つかった、引退済みのモデル名10箇所について書きます。
・Anthropic・OpenAI・Googleが、モデルの終了予告についてそれぞれ何を約束しているか
・Claudeの実際の引退5件が、告知から何日で起きたか
・自社の本番コードに、引退済みのモデル名が何箇所残っていたか
今日、ひとつのAPIが止まった——AIのモデルには終了日がある
OpenAIは2026年3月24日、Videos APIとSora 2系のモデル(sora-2・sora-2-pro・各スナップショット)の終了を予告しました。終了日は本日2026年9月24日で、公式ドキュメントには移行先として推奨する代替モデルの記載がありません。
AIのモデルは、購入したソフトウェアのように手元に残り続けるものではありません。Anthropicは自社のモデルの状態を4段階の語で管理しています。稼働中はActive、更新が止まるだけの状態はLegacy、代替と引退日が示された段階はDeprecated、呼び出すと失敗する段階はRetiredと呼びます。それぞれ現役・更新なし・非推奨・引退という意味です。モデルはこの4段階のどこかに常に位置していて、今日動いているという事実は、明日も動く保証にはなりません。
3社が約束しているものは、同じではない
3社の予告ページを読むと、同じ「終了の予告」という言葉が指している中身は、会社ごとに違います。
| 会社 | 何を約束しているか | 期間 | 対象 |
|---|---|---|---|
| Anthropic | 公開されたモデルの引退を、稼働中のデプロイがある顧客へ事前通知 | 少なくとも60日前 | 公開モデル全般 |
| OpenAI(一般提供) | 一般提供モデルの終了を事前予告 | 少なくとも6か月前 | 一般提供モデル |
| OpenAI(特化版) | chat版・Codex版・deep research版などの終了を事前予告 | 少なくとも3か月前 | 特化版モデル |
| OpenAI(プレビュー版) | はるかに短い予告で引退することがあると明記 | 2週間程度のことがある | モデル名にpreviewが入るもの |
| 終了しうる最も早い日を提示。正確な終了日は別途通知 | 日数の約束なし | 公開モデル全般 |
予告の下限は、区分によって14日から180日まで開く
上の図の日数は、6か月・3か月を30日として数え直したものです。同じOpenAIの中でも、一般提供モデルの180日と、名前にpreviewが入るものの14日とでは約13倍の開きがあります。会社どうしで比べると、Anthropicの60日とOpenAIの一般提供モデルの180日で3倍です。Googleはそもそも日数を約束しておらず、公開している終了予定日は「そのモデルが引退しうる最も早い日」であって、正確な終了日は代替モデルへ移行できるよう別途通知するとされています。自社がどの区分に当てはまるか気になる方は、無料相談でも確認可能です。
数字がズレる理由——3つの数字は、別のものを数えている
「通知の下限」「予告の区分」「最早日」は同じ物差しではない
上の図の4本は、並べて比べられる同じ種類の数字に見えます。しかし実際は、3種類の異なる性質の情報が混ざっています。
Anthropicの60日は「通知の下限」、つまり会社が約束している最低保証の日数です。実際の通知はこの数字より前に来ることもあります。OpenAIの180日・90日・14日も同じで、一般提供モデル・特化版・プレビュー版という3つの区分ごとの下限にすぎません。1つの数字ではなく、対象によって変わる3段構えの制度だと捉える必要があります。
Googleだけ、性質の違う情報を出している
Googleが出しているのは日数ではなく日付です。「これより早くは終了しない」という片側の情報だけで、実際の終了日がそれよりどれだけ後になるかは示されていません。Anthropic・OpenAIの数字が「これだけ前には必ず知らせる」という予告期間の約束であるのに対し、Googleの日付は「少なくともこの日までは使える」という別の種類の情報です。比較するときは、その数字が通知の下限なのか、区分ごとの制度なのか、最早の目安なのかを先に確かめないと、数字を並べただけでは比較になりません。
3社の廃止ページを読むときに確かめる順番は、数字の大小より先に3つあります。1つ目は、その数字が最低保証なのか、実際に起きた実績なのか。2つ目は、対象がどの区分のモデルか、一般提供モデルの話なのか特化版やプレビュー版の話なのか。3つ目は、日数そのものではなく片側の日付だけが示されていないか。上の表に並べた5行は、この3つの問いへの答えがそれぞれ違います。
実際はどうだったか——Claudeの引退5件を数えると60日から114日
約束の数字だけでなく、実績も見ておきます。Anthropicが公表している「Model deprecations」から、実際に引退したモデルの告知日と引退日を並べました。
| モデル | 告知日 | 引退日 | 日数 |
|---|---|---|---|
| claude-3-7-sonnet-20250219 | 2025-10-28 | 2026-02-19 | 114日 |
| claude-3-5-haiku-20241022 | 2025-12-19 | 2026-02-19 | 62日 |
| claude-3-haiku-20240307 | 2026-02-19 | 2026-04-20 | 60日 |
| claude-sonnet-4-20250514 / claude-opus-4-20250514 | 2026-04-14 | 2026-06-15 | 62日 |
| claude-opus-4-1-20250805 | 2026-06-05 | 2026-08-05 | 61日 |
実際の告知から引退までは60日から114日
5件のうち1件はちょうど60日で、残りは61日から114日でした。公表している60日という数字は目安ではなく最低保証で、実績がそこに張り付く回もあります。60日しか猶予がないケースを前提に、切り替えの体制を組んでおく必要があります。Amazon BedrockやGoogle Cloud経由でClaudeを使っている場合は、各社が別のスケジュールを持つ点にも注意してください。
自社のコードを数えたら、引退済みの名前が10箇所残っていた
実測の方法
一次情報を確認するだけでなく、自社のコードでも同じことが起きていないかを数えました。対象は自社の本番リポジトリ5つ(社内向けプラットフォーム・書類作成SaaS・画像生成の道具・分析の道具ほか)で、`.py` `.ts` `.tsx` `.js` `.mjs` の中に文字列として直接書かれたモデル名を洗い出しています。node_modules等は除外しました。この「モデル名の直書き」は、設定ファイルではなくコードの中に文字列として書いてある状態を指します。
見つかったもの
model: "claude-sonnet-4-20250514" とコードの中に直接書かれており、環境変数で切り替える作りにはなっていませんでした。名前にpreviewが入るモデル(2週間で消えうる区分)は8箇所、exp(実験版)は1箇所です。自社コードのモデル名は19種類146箇所
確かめられたのはここまでです。引退日を過ぎたモデル名が本番コードに残っていたという事実であって、その処理が実際にエラーを返していたかどうかは、今回の実測では確認していません。数えて初めて分かったのは、引退した名前は消えずにコードに残り、呼び出されるまで気づかれないということでした。
止まらないための設計
ここまでの実績と自社の実測を踏まえると、担当者の仕事を増やさない形で備える方法は3つに整理できます。
| 設計 | やること |
|---|---|
| ①モデル名を1か所に寄せる | 呼び出しのたびにモデル名を書かず、設定ファイルや環境変数など1箇所にまとめる。変わるのはその1箇所だけになる |
| ②出力の形を先に決める | モデルを切り替えても呼び出し側が壊れないように、期待する出力の項目と型をコードの側で先に決めておく |
| ③棚卸しの手段を持つ | いま何のモデルをどれだけ呼んでいるかを、自分で確認できる状態にしておく |
③の棚卸しは、Anthropicの場合はConsoleのUsageページから「Export」を選ぶと、APIキー別・モデル別の利用がCSVで書き出せます。自社の実測もこの3つの設計ができていなかったために起きたものです。モデル名を1か所に寄せていれば、10箇所を1箇所に直すだけで済んでいました。
この3つは、大がかりな仕組みを新しく作ることを意味しません。すでにあるコードのモデル名を1か所に集めるだけでも、次に同じ実測をしたときの箇所数は減ります。棚卸しの手段も、最初は表計算ソフトに呼び出し箇所と引退予定日を書き出す一覧を作るところから始めれば足ります。担当者に新しい作業を1つ増やすのではなく、いま散らばっている作業を1つにまとめる方向で設計するのが要点です。
よくある失敗・NGパターン
- 最新にしておけば安心。現役のモデルにも「これより前には引退しない日」が公表されています。例えばclaude-haiku-4-5-20251001は2026年10月15日です。名前にpreviewが入るものは2週間で消えうるので、最新だから安全とは限りません。
- 1社に絞れば管理が楽になる。3社は約束の単位が違うため、1社に絞っても日数の見積もりは他社と共有できません。絞るなら、使用中のモデルを一覧できる手段があるかで選ぶべきです。
- 動いているから大丈夫。自社の実測でも10箇所が残っていました。呼ばれていない処理は、動いているかどうかでは分かりません。
- モデルだけ見ておけばいい。パラメータも廃止の対象です。temperature・top_p・top_kはClaude Opus 4.7以降で非推奨になっており、既定値以外を渡すと400エラーになります。
自社が何を呼んでいるか確認したい方は、FDE型AI導入支援(無料相談・無料AI診断)からご相談ください。
よくある質問
AIのモデルには、なぜ終了日があるのですか?
AIを提供する会社は、新しいモデルへ入れ替えるために古いモデルへ終了日を設定します。Anthropicはこの状態を4段階の語で管理していて、稼働中はActive、更新が止まる状態はLegacy、代替と引退日が示された状態はDeprecated、呼び出すと失敗する状態はRetiredと呼ばれます。
Anthropicのモデルはいつまで使えますか?
Anthropicは公開されたモデルについて、引退の少なくとも60日前に、稼働中のデプロイがある顧客へ通知するとしています。現役のモデルには「これより前には引退しない日」という目安の日付も公表されていますが、その日に必ず引退するという意味ではありません。
OpenAIのモデルの予告期間はどれくらいですか?
一般提供モデルは少なくとも6か月前、chat版やCodex版などの特化版は少なくとも3か月前です。モデル名にpreviewが入るプレビュー版は、2週間ほどの短い予告で終了することがあります。
Googleのモデルの終了日はどうやって確認しますか?
Googleが公開している終了予定日は、そのモデルが終了しうる最も早い日を示すもので、確定した日数の約束ではありません。正確な終了日は、代替モデルへ移行できるよう別途通知するとされています。
自社が引退済みのモデル名を呼んでいないか、どう確認すればいいですか?
コードの中に文字列で直接書かれたモデル名を洗い出し、各社の廃止ページと突き合わせるのが確実です。自社の実測でも、この方法で19種類146箇所のモデル名が見つかり、そのうち10箇所が引退済みでした。呼び出しの実績まで確かめたい場合は、Anthropicの場合はConsoleのUsageページからAPIキー別・モデル別の利用をCSVで書き出せます。
モデル名をコードに直接書くと、何が問題になりますか?
呼び出しのたびにモデル名が散らばるため、引退日が来ても全箇所を直しきれないことがあります。自社の実測でも、引退済みのモデル名がAPIの処理9本と生成スクリプト1本の、計10箇所に残っていました。
まとめ
AIのモデルは、性能が上がって自然に置き換わるものではありません。会社が日付を決めて終了させるものです。Anthropicは引退の60日前から、OpenAIは一般提供モデルなら6か月前、特化版なら3か月前、プレビュー版は2週間ほどから通知します。Googleが示すのは終了しうる最も早い日で、日数そのものは約束していません。Claudeの実際の引退5件は60日から114日で起きており、公表している下限は目安ではなく最低保証です。自社のコードを数えると、19種類146箇所のモデル名のうち10箇所が引退済みでした。モデル名を1か所に寄せ、出力の形を先に決め、棚卸しの手段を持つ——この3つが、次の終了日に慌てないための最低限の備えです。
・Anthropic「Model deprecations」(2026年9月24日閲覧)
・OpenAI「Deprecations」(2026年9月24日閲覧)
・Google「Gemini deprecations」(2026年9月24日閲覧)
・あわせて読む:Googleが画像生成AIを3つ止めた(当ブログ)
・あわせて読む:AIツールは「終売」前提で選ぶ(当ブログ)
