金沢市のAI補助金は、計画づくりの1年に3分の2を出す——石川で使える制度と無料の相談先(2026年10月)
2026.10.05 夕 | 株式会社NGraph
金沢市のAI・DX推進支援事業補助金は、AIを入れる前の計画づくりに、1年目は補助対象経費の3分の2(令和8年度・上限150万円)を出す2年がかりの制度です。1年目だけの申し込みはできません。令和8年度の募集は2026年5月22日で終わっていて、次は令和9年度に募集される予定です。2026年10月5日時点で、今すぐ申請できる制度ではありません。
この順番が理にかなっているかは、北陸財務局が2026年1月に公表した調査で確かめます。北陸の101社のうち、AIを活用していない企業に理由を1つ選んでもらうと、導入・運用コストは5つの選択肢のうち最下位の9.1%でした。止めているのは費用より、人・体制の不足とリスクへの不安です。ただしこれは、財務局が日頃ヒアリングしている企業の結果で、石川県だけの数字ではありません。
・金沢市の補助金が「1年目は計画づくり、2年目は導入」の2段階である理由と、要項の中身
・AI導入が止まる理由は、お金より「何に使うかが決まっていないこと」である根拠
・石川で使える無料の相談先と、令和9年度の募集までにやる順番
金沢市のAI・DX補助金は2年がかり——1年目は計画づくりのコンサル費だけが対象
申請要項によると、目的は、市内の中小企業に課題に合ったシステム導入の計画づくりを支援し、AI・DXの実装まで伴走して支えることです。DXは、デジタル技術で業務のやり方そのものを変えること。伴走支援は、外部の専門家が一定期間そばについて一緒に進める支援を指します。問い合わせ先は金沢市経済局産業政策課です。
1年目に計画をつくり、2年目に計画に沿って導入する2段階です。要項には、2年間の取組みが必須で、1年目のみの取組みはできないと書かれています。2年目に申請できるのは1年目の支援を受けた事業者だけです。
1年目の計画づくりに上限150万円、2年目の導入に上限200万円
| 項目 | 1年目 AI・DX推進計画策定事業 | 2年目 AI・DX導入事業 |
|---|---|---|
| 補助率 | 令和8年度は3分の2。令和9年度(予定)は2分の1、小規模企業者は3分の2 | 2分の1。小規模企業者は3分の2 |
| 上限額 | 150万円 | 200万円 |
| 対象経費 | 委託料(コンサルティング費用)の1区分 | 備品購入費、使用料及び賃借料、委託料、設置工事費、その他市長が必要と認める経費 |
| 時期 | 交付決定日から令和9年2月26日まで | 令和9年度に実施予定 |
1年目の対象は、伴走支援の3つを全部満たすコンサル費(上限150万円)
1年目の対象は、AI・DXのコンサルタント事業者による伴走支援のうち、次の3つをすべて満たすものです。1つ目は、デジタル技術の基礎知識の習得と、社内のDX推進の気運づくり。2つ目は現況把握で、業務の棚卸しと経営課題の整理、体制づくりを含みます。業務の棚卸しとは、いま誰がどの仕事にどれだけ時間を使っているかを書き出すことです。3つ目は、目標設定と計画の策定です。
補助対象経費の区分は「委託料」です。外部の事業者に仕事を頼んで払う費用のうち、この3つの実施にかかるコンサルティング費用が当たります。1年目の表に載っている経費区分は、この委託料の1行だけです。
交付決定は、市が「この事業に補助金を出す」と正式に決めることで、これより前に発注した経費は対象外です。
2年目の対象は、1年目の計画に沿った導入費(上限200万円)
2年目は令和9年度に実施する予定で、1年目に策定した計画に基づくシステム等の導入が対象です。備品購入費には専用ソフトウェア・情報システムの購入が、使用料及び賃借料にはその借用が入ります。借用の契約が補助対象期間を超える場合は、事業完了日時点で支払済みの金額のうち、最大で3年分に相当する額が対象です。
申請要項の本文に、生成AIやクラウドサービスという語はありません。月額で払うAIの利用料が対象になるかは、専用ソフトウェアや情報システムの借用に当たるかどうかで決まるので、産業政策課に確認してください。
申請できる会社の条件と、対象外になる経費
対象者は、申請日以前に引き続き1年以上、市内に主たる事業所または生産施設を持つ中小企業者か小規模企業者です。小規模企業者は、おおむね常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者を指します。
対象外として挙げられているのは、交付決定日より前の発注分や、振込手数料・送料などです。補助対象経費は消費税を含みます。
なぜ計画が先か——北陸101社の調査で、使わない理由の最下位はコスト9.1%
導入より先に計画づくりへお金を出す順番が理にかなっているかを、北陸財務局の調査で見ます。調査は2025年12月上旬から2026年1月上旬に、石川・富山・福井の企業等101社へ行われました。日頃ヒアリングしている企業で大手も含まれ、管内全体を網羅しません。県別の内訳は公表されていないので、石川県の数字としては扱いません。
止めているのは、お金より人・体制・不安
現在AIを活用している企業は78.2%、活用していない企業は21.8%でした。活用していない企業に理由を1つだけ選んでもらうと、「人材・スキル・体制不足」と「各種リスクへの不安」がともに27.3%で並びました。「活用する必要性を感じない」と「その他」が18.2%で、導入・運用コストは9.1%です。5つの選択肢の中で、コストが一番低い結果でした。
AIを使っていない理由で、コストは最下位の9.1%
理由を1つしか選べない設問なので、「コストも気になる」という声は出てきません。それでも最も重い1つでコストが最下位だったことは、費用の補助だけでは動き出せない会社があることを示しています。ただし活用していない企業は101社の約2割で、母数は小さい結果です。調査資料には、活用していない企業の声として「専門人材の確保ができれば製造管理などに活用したい」(化学)が載っています。
効果は時間に出て、売上の増加は5.1%
活用している企業に効果を聞いた設問は、複数回答です。最も多いのは「業務時間の削減」で96.2%でした。コスト削減は34.2%、売上の増加は5.1%、新規商品等の開発等は3.8%でした。
AIの効果は時間に出る。売上の増加は5.1%
使い道も同じ方向です。用途は文書作成が87.3%、情報検索・収集・調査が69.6%で、この2つが突出しています。いま使われているのは、文書づくりと調べものという事務の仕事です。
78.2%という数字の読み方——対象と時期で変わる
先週の福井回で扱った福井商工会議所の調査では、生成AIを業務で活用している会社は44.4%でした。会員企業151件の回答で、調査は2025年4月です。北陸財務局の78.2%とは対象も時期も違い、理由は福井の回に書きました。
数字をつなぐと、補助金の形が見えてきます。止まる理由の上位は人・体制・不安で、効果が出るのは人が時間を使っている業務です。先にやるべきは道具の購入ではなく、どの業務にどう使うかを決める工程です。金沢市の制度は、その工程を1年目として切り出す形になっていて、令和8年度は3分の2の補助率が置かれています。自社がどの業務から任せられそうか、8問の無料AI診断で現在地を確認できます。
審査で見られる5項目——申請書が書かせるのは「業務の棚卸し」
採択は、書類選考と、非公開の審査会でのプレゼンテーションで決まります。評価項目は5つで、右端の列は申請書を書く前に整理しておくとよいこと(NGraphの読み)です。
| 評価項目 | 要項に書かれている内容 | 先に整理しておくこと |
|---|---|---|
| 現状の課題 | 受発注管理、会計・勤怠管理などの各システムの導入有無。経営課題、AI・DXの必要性、デジタル活用の課題の整理状況 | いまどの業務をどの道具で回しているか。どこで時間が消えているか |
| 将来ビジョン | 事業終了後のビジョンが明確か | 計画が終わったとき、仕事がどう変わっていたいか |
| 実施体制 | 取り組む体制が適切か | 誰が担当し、誰が判断するか |
| コンサル事業者 | 希望するコンサルティング事業者による事業内容が適合しているか | 候補の事業者に何を頼むか |
| モデル事業 | 効率化や生産性の向上が見込めて具体的か。市内の他事業者への横展開が期待できるか。専門家等の支援が必要とされているか | 効果が見込める業務を、1つに絞って書けるか |
現状の課題・将来ビジョン・実施体制の3つは、AIの知識がなくても答えられる中身と読めます。必要なのは、自社の仕事を自分の言葉で説明できる状態です。審査で見られているのも、道具の名前より業務の整理だと読めます。
申請前に知っておきたいのは公開の範囲です。策定した計画は、金沢市のホームページに掲載され、採択された事業者のホームページにも掲載します(令和9年5月頃から)。採択企業名と事業名なども公表されます。
相談窓口は3月に終了、補助金は同じ年に創設——金沢市のページに並ぶ2つの事実
金沢市の公式ページには、2つの事実が並んで書かれています。1つ目は、金沢市中小企業DX相談窓口が令和8年3月26日で終了したこと。2つ目は、令和8年から金沢市AI・DX推進支援事業補助制度を創設したことです。窓口の終了の理由はページに書かれていないので、この2つの関係はここでは推測しません。
同じページが、今後の相談先として挙げているのは次の5つです。
- ITビジネスプラザ武蔵のディレクターによる無料相談
- 起業実践アドバイザー派遣制度のICT部門。起業されて5年以内の方と商店街等が対象
- 石川県産業創出支援機構の専門家派遣制度(デジタル分野)
- 石川県よろず支援拠点
- 金沢商工会議所のデジタル化相談デスク
石川の現場の例と、私たちが見た「順番」
北陸財務局の資料には、石川県の事例として七尾市の恵寿総合病院が載っています。病床数386床・職員数875名の病院で、中小企業の事例ではありません。「石川の現場の例」として進め方だけを見ます。
資料によると、経営陣が旗振り役となり、院内の職種を問わない横断的な開発チームをつくりました。RPA(決まったパソコン操作を人の代わりに自動で繰り返すソフト)は現在130体以上が稼働し、年間12,000時間相当の業務時間を削減しています。生成AIでは、退院時サマリー(入院中の経過を退院のときに医師がまとめる文書)の作成が最大で3分の1に短縮されました。数字は資料の公表時点のものです。注目したいのは数字より、職種横断のチームと、経営陣が旗を振るという順番です。
NGraphの本社は福井市にあり、石川・富山への訪問にも対応しています。現場ヒアリングと業務設計を担当する非エンジニアの代表と、実装を担当するCTOの2名が直接担当します。金沢市のこの補助金で、コンサルタント事業者として支援した実績はありません。業務の棚卸しからなら一緒に整理できるので、無料相談・無料AI診断を入口にしてください。
石川で今使える相談先と制度——2026年10月5日時点
金沢市の補助金は次の募集を待つ段階なので、いま動くなら無料の相談先と国の制度が先です。次の表は各公式ページから2026年10月5日時点で確認した内容で、申し込む前に公式ページで見直してください。
| 名称 | 何をしてくれるか | 費用・期日 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| ISICO 外部専門家派遣 | ISICOは公益財団法人石川県産業創出支援機構の略称。県内に事業所を有する中小企業者等へ外部専門家を派遣。デジタル化では、事務処理の効率化、ペーパレス化、システム導入に向けた課題解決を手伝う。初回訪問にISICOスタッフが同行 | 年度内3回まで原則無料(回数に制限のない別の要件あり)。申請から初回訪問まで2〜3週間 | 経営支援課 076-267-1244 |
| ISICO 専門家派遣(デジタル分野) | デジタル化に取り組む県内企業に専門家を派遣し、継続的な診断や助言を行う。システム開発等の実務は行わない | 謝礼・旅費は無料。ページの更新日は2023年4月18日 | 設備導入支援課 076-267-1174 |
| 金沢商工会議所 デジタル化相談デスク | 経営指導員が相談内容を聞き、専門家を派遣してサポート。例は公式LINEでの集客、ECサイトの立ち上げ、SNS活用 | 相談無料。相談内容によっては利用できない場合あり | 金沢商工会議所 |
| 石川県よろず支援拠点 | 金沢市のページがDX対応の相談先として案内 | — | 鞍月2-20 新館1階 076-267-6711 |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 国の補助金 | 通常枠は2026年10月30日17:00締切。交付決定は2026年12月10日予定 | 事務局 |
| 令和8年度の業務改善助成金 | 事業場内最低賃金を引き上げ、設備投資等をした場合の国の助成金 | 令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日のいずれか早い日まで | 厚生労働省の案内を参照 |
デジタル化・AI導入補助金2026は、事務局が確定した募集回だけを公表し、随時更新するとしています。制度の中身はこちらの記事に書きました。業務改善助成金は、石川県の最低賃金が2026年10月3日から時間額1,113円になった(59円の引き上げ、改正前は1,054円)ことで期限が決まります。発効日の前日は10月2日なので、石川県の事業所の申請期限は10月2日だった計算になります。詳しくは業務改善助成金の記事をご覧ください。
令和9年度の募集までにやる順番
令和9年度の募集は予定で、1年目の補助率は2分の1(小規模企業者は3分の2)と、要項に予定として書かれています。募集時期は申請要項に書かれていません。NGraphからは、次の順番を提案します。
- 無料の専門家派遣で、業務の棚卸しを始める。ISICOの外部専門家派遣は、年度内3回まで原則無料で、初回訪問まで2〜3週間かかります。
- 対象の業務を1つに絞る。評価項目の「現状の課題」と「モデル事業」に答えられる程度まで、1つの業務に決めます。
- コンサルタント事業者の候補を探し、見積りを取る。1年目の対象経費はコンサルティング費用の1区分なので、何を頼むかが決まっているほど比べやすくなります。
- 令和9年度の要項を確認する。補助率・上限額・募集期間は、公開された要項で確かめます。
よくある失敗・NGパターン
- 交付決定の前に発注してしまう:要項は、交付決定日より前に発注を済ませた経費を対象外としています。契約と発注は交付決定を待ちます。
- 1年目だけのつもりで申し込む:2年間の取組みが必須で、1年目のみの取組みはできません。2年目は1年目の計画に基づく導入が対象なので、導入の見通しも計画に含めます。
- 同じ事業内容で、国などの補助金と重ねる:同一の事業内容で、国・県・市・その他の公的機関から補助金等の交付や交付決定を受けている事業は対象外です。
- 計画が公開されると知らずに書く:策定した計画は、金沢市と採択事業者のホームページに掲載されます。公開できない内容は、書き方を事前に決めておきます。
- 無料の専門家派遣に「作ってもらう」ことを期待する:ISICOのデジタル分野の専門家派遣は、システム開発等の実務を行いません。診断と助言を受ける場として使います。
制度を選ぶ前に、無料AI診断で現在地を見ておくと迷いが減ります。
よくある質問
令和8年度の募集は終わりましたが、今から申請できますか?
できません。1年目の募集期間は令和8年3月16日から5月22日までで、終了しています。次は令和9年度の予定です。募集時期は申請要項に書かれていないので、金沢市経済局産業政策課(076-220-2204)に確認してください。
1年目の計画づくりだけ、補助金を使えますか?
使えません。要項は、2年間の取組みが必須で、1年目のみの取組みはできないと書いています。2年目に申請できるのは、1年目の支援を受けた事業者だけです。
ChatGPTなどAIツールの月額料金は対象になりますか?
1年目の経費区分は委託料の1つで、コンサルティング費用が対象です。令和9年度に実施予定の2年目では、使用料及び賃借料には、専用ソフトウェアや情報システムの借用が当たります。ただし、要項の本文に生成AIやクラウドサービスという語はないので、個別のサービスが対象かどうかは産業政策課に確認してください。
金沢市以外の石川県の会社は、どうすればよいですか?
金沢市の補助金の対象は、申請日以前に引き続き1年以上、市内に主たる事業所または生産施設を持つ事業者です。市外の会社は、石川県内に事業所があればISICOの外部専門家派遣を使えます。年度内3回まで原則無料です。
ISICOの専門家に、AIの仕組みを作ってもらえますか?
作ってもらうことはできません。ISICOのデジタル分野の専門家派遣は、システム開発等の実務は行わないと明記しています。診断と助言を受ける制度として使います。
国の補助金と併用できますか?
同一の事業内容で、国・県・市・その他の公的機関から補助金等の交付や交付決定を受けている事業は対象外です。別の事業内容での扱いは産業政策課に確認してください。
まとめ
金沢市のAI・DX推進支援事業補助金は、導入より先に、業務の棚卸しと計画づくりへお金を出す制度です。財務局がヒアリングした北陸101社でも、AIを使っていない理由の最下位はコストの9.1%で、止めているのは人・体制・不安でした。
令和9年度の募集を待つ間にできるのは、ISICOの無料の専門家派遣で業務の棚卸しを始めることです。
・金沢市「金沢市AI・DX推進支援事業補助金」
・金沢市「金沢市AI・DX推進支援事業補助金申請要項」
・金沢市「金沢市中小企業DX相談窓口」
・北陸財務局「北陸管内の経済情報(全国財務局長会議資料)」内「Ⅱ.地域におけるAI活用を巡る現状」(2026年1月29日公表・ヒアリング2025年12月上旬〜2026年1月上旬・北陸101社)
・公益財団法人石川県産業創出支援機構(ISICO)「外部専門家を石川県内中小企業に派遣します」(2026年7月13日更新)
・公益財団法人石川県産業創出支援機構(ISICO)「専門家派遣制度(デジタル分野)」(2023年4月18日更新)
・金沢商工会議所「デジタル化相談デスク」
・デジタル化・AI導入補助金2026事務局「事業スケジュール | デジタル化・AI導入補助金2026」
・石川労働局「令和8年度「石川県最低賃金」を改正決定しますー59円引上げ 時間額1,113円に。賃金の引き上げに向けた支援の活用を!ー」(2026年8月28日)
・厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」
