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国のAI基本計画に「伴走」が入った——補助金の次は地域AXネットワーク、中小企業が待たずに決める3つ

2026.09.22 夕 | 株式会社NGraph 国のAI基本計画に「伴走」が入った——補助金の次は地域AXネットワーク、中小企業が待たずに決める3つ

2026年7月14日、政府の人工知能基本計画が閣議決定で改定されました。半年前の12月版で、中小企業向けの施策は「デジタル化・AI導入補助金を始めとする中小企業におけるAI導入促進の円滑化を進める」という一文だけでした。7月版はここに「AI導入・定着を伴走しながら進め」「伴走支援を行う支援機関のAI支援レベルの底上げ」という書き方を加えています。中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月公表)では、中小企業のAI導入率は20.4%です。この記事でわかることは次の3つです。

この記事でわかること
・7月の改定で、中小企業向けの施策の書き方がどう変わったか
・「伴走」という言葉が、計画・概算要求・中小企業側の調査でそれぞれ何を指しているか
・令和9年度概算要求に載った地域AXネットワークの中身と、待たずに社内で決められる3つ

7月の改定で、中小企業の行はどう変わったか

内閣府が所管する人工知能基本計画は、AI法(令和7年法律第53号)第18条第1項に基づき、政府が講ずべき施策を定める計画です。令和7年12月23日に最初の計画が閣議決定され、半年あまり後の令和8年7月14日、改定版が閣議決定されました。7月版は本文中で自らを「第Ⅱ期計画」と呼んでいます。両版とも「当面は毎年変更を行うこととする」としており、今回の改定はその1回目にあたります。原則の数も、12月版の3原則・4つの基本的な方針から、7月版は4原則・4つの基本的な方針へ増えました。

中小企業に関する記述を具体的に比べると、変化がはっきりします。12月版で中小企業向けの施策として書かれているのは、第3章第1節(2)②の「デジタル化・AI導入補助金を始めとする中小企業におけるAI導入促進の円滑化を進めるなど、広く地域を支える産業へのAIの導入を促進する」という一文だけです。NGraphが12月版のPDF本文を数えたところ、「中小」という語自体、全体で2回しか出てきません。

7月版では、第3章第1節の冒頭に「中堅・中小企業や地方部を含め、世代を問わずほとんどの国民がAIを日常的に利活用する社会を目指す」という一文が加わりました。続けて「人手不足が特に顕在化する地方部における中堅・中核企業へのAI導入・定着を伴走しながら進め、地方の伸び代を成長に転換するため、『地域AX』を推進する」と書かれています。同じ章の(2)⑤は「中小企業がAXを推進するための地域ごとのネットワーク構築や伴走支援を行う支援機関のAI支援レベルの底上げ」という記述に変わりました。可視化について定めた第4節(1)①も、12月版の「改革の取組が進む事業者に対する重点的な支援」から、7月版は「人材の育成・確保」へ書き換わっています。

項目12月版(令和7年12月23日)7月版(令和8年7月14日)
原則の数3原則・4つの基本的な方針4原則・4つの基本的な方針
中小企業の施策「AI導入促進の円滑化を進める」「AI導入・定着を伴走しながら進め」「地域AX」を推進
可視化の行「重点的な支援」「人材の育成・確保」
担当府省経済産業省経済産業省・総務省

「中小」「伴走」「地域」が12月版から7月版で増えた

最も増えたのは「エージェント型」(12月版は「AIエージェント」表記で3回)12月版7月版中小2%7%伴走0%3%エージェント型0%23%地域5%13%エージェント型の12月版0回は表記の違い(本文参照)。中小・伴走・地域は語そのものが増えた出所:NGraph集計(内閣府 人工知能基本計画 令和7年12月23日版・令和8年7月14日版のPDF本文)

語の出現回数を数えても、同じ変化が出ます。「中小」は2回から7回、「伴走」は0回から3回、「地域」は5回から13回に増えました。最も増えたのは「エージェント型」で、12月版の0回から7月版は23回です。ただし12月版が完全に無風だったわけではなく、「AIエージェント」という表記であれば3回出てきます。数え方を分けて比べている点は、ここで断っておきます。

「伴走」は3つの文書で違うものを指している

「伴走」という言葉は、この記事が扱う3つの文書のそれぞれに出てきますが、指している中身は同じではありません。

1つ目の7月版の人工知能基本計画は、地方の中堅・中核企業への「AI導入・定着を伴走しながら進め」ると書いたうえで、具体的な取組として「伴走支援を行う支援機関のAI支援レベルの底上げ」を挙げています。政府が底上げする相手は、企業ではなく支援機関の側です。2つ目は後述する令和9年度概算要求で、「中小企業とAIサービス提供者、支援者が出会う場」を地域ごとに構築し、「AI導入を伴走支援」すると書かれています。伴走する主体は明示されていません。3つ目は中小企業の側の調査です。中小機構の調査で、公的支援として「専門家の派遣や導入相談」を必要と答えた企業は59.8%で、公的支援に関する5項目のうち最も低い割合でした。ただし6割が必要と答えており、要らないと考えている企業が多数派というわけではありません。この調査は令和7年11月17日から12月12日に実施されており、7月の計画改定より前の時点のものです。

日付についても1つ注意があります。一部の解説記事は7月版の閣議決定日を「7月10日」と書いていますが、内閣府の掲載ページとPDF表紙が示す日付は7月14日です。この記事では7月14日で統一しています。

自社が該当するのがどの「伴走」の対象なのか整理したい場合は、無料相談で一緒に確認できます。

令和9年度概算要求に載ったもの

中小企業庁は「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」を公表しました。概算要求は各省庁が財務省に提出する要求の段階で、金額も事業名も確定ではありません。資料に開始時期の記載もありません。

その中に載っているのが「地域AXネットワーク事業」です。資料の説明はこうです。「生産性の不連続な革新に向け、中小企業とAIサービス提供者、支援者(商工会・商工会議所、税理士、金融機関、高専等)が出会う場を地域ごとに『地域AXネットワーク』として全国に構築し、AI導入を伴走支援。あわせて、業種別にAI導入の進め方・手法を整理した『業種別ガイドライン』を作成・周知し、中小企業のAX実現につなげる。」

この事業は単独の予算項目ではなく、「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」という枠の内訳の1つです。この枠全体の金額は96億円(令和8年度当初33億円、令和7年度補正49億円)ですが、同じ枠にはよろず支援拠点事業や生産性向上支援センター事業も含まれており、地域AXネットワーク単独の額は資料に書かれていません。

もう1つ、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という名前も載っています。こちらは独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金という枠の内訳の1つで、枠全体は6,980億円(令和8年度当初188億円、令和7年度補正3,400億円、一部は既存基金の内数)です。説明は「人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援」というもので、既存の省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金2026と統合されるのかどうかは、資料からは読み取れません。

事業名位置づけ枠全体の金額内容
地域AXネットワーク事業中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業の内訳の1つ96億円(R8当初33億円、R7補正49億円)※枠全体の額中小企業とAIサービス提供者、支援者が出会う場を地域ごとに構築。業種別ガイドラインも作成
省力化・デジタル化・AI投資補助金中小企業基盤整備機構運営費交付金の内訳の1つ6,980億円(R8当初188億円、R7補正3,400億円、一部既存基金の内数)※枠全体の額AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援

いずれも要求段階のため確定ではなく、開始時期は資料に書かれていません。ここまでが、7月の計画改定に続いて出てきた、国側の「伴走」の中身です。次の章では、中小企業の側がどう答えているかを見ます。

中小企業の側の数字

制度側の動きに対して、中小企業の側はどう答えているでしょうか。中小機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(調査期間は令和7年11月17日から12月12日、対象は全国の中小企業10,000社、業務委託先は東京商工リサーチ)から見ていきます。

AI導入率は20.4%、検討中が18.6%で、合わせて39.0%です。導入済みでも検討中でもない企業は61.0%(100から39.0を引いた算出値)で、6割を超えています。関連記事「中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か」では、調査ごとにこの数字が割れる理由を扱っているので、あわせて読んでください。

中小企業の6割超は、AI導入済みでも検討中でもない

20.4%導入済み18.6%検討中61.0%それ以外それ以外61.0%は100−39.0(導入20.4%+検討18.6%)の算出値出所:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表)n=1,647

情報不足の実態も調査に出ています。「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらない企業は83.3%で、社内の理解や情報量を尋ねた4項目の中で最も多い回答でした。「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらない企業も79.8%です。

では、どんな公的支援が必要と答えているのでしょうか。5項目のうち最も高いのは「導入費用などの助成」で77.9%、次いで「導入事例などの情報提供」70.5%、「従業員向けの教育・研修」67.7%、「試行導入などの機会」61.3%と続き、最も低いのが「専門家の派遣や導入相談」で59.8%でした。

導入推進に必要な公的支援——専門家の派遣・相談が5項目で最も低い

6割が必要と回答(要らないという意味ではない)導入費用などの助成77.9%導入事例などの情報提供70.5%従業員向けの教育・研修67.7%試行導入などの機会61.3%専門家の派遣や導入相談59.8%7月版計画が伴走として厚く書いたのは、この最も低い項目に近い領域出所:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表)n=1,591〜1,628

7月版の計画が書き加えた「伴走」は、5項目でいえば、この最も低い項目に近い支援です。中小企業が最も多く必要と答えたのはお金の助成で、専門家の派遣や相談そのものへの要望は、調査上は5項目の中で相対的に低い位置にあります。調査は改定前に行われているので、伴走の中身が具体的に見えてくれば、この順位が動く可能性はあります。

伴走があっても、現場で止まる理由

ここまで見てきた「伴走」は、いずれも支援機関の側の話です。7月版の計画が底上げすると書いているのは支援機関のAI支援レベルで、概算要求が構築すると書いているのは中小企業と支援者が出会う場です。どちらも、社内でAIの導入を任された担当者本人の仕事を、直接減らすものではありません。

担当者に実際に増えるのは、次のような仕事と責任です。まず、AIの使い方を自分で覚える必要があります。次に、AIが出した答えの間違いを見つけて直すのも自分の役目になります。導入がうまくいかなければ、なぜ失敗したのかを社内で説明するのも担当者です。逆にうまくいっても、給料が上がるわけではありません。支援機関からの紹介や相談、業種別ガイドラインは、この一つひとつを肩代わりしてはくれません。使わないのは担当者の怠慢ではなく、こうした構造が理由です。

現場の話:NGraphは飲食業の本部に入り、新しく入る人向けの入社ガイダンスの仕組みをWebアプリとして作っています。Claude Codeで作り、実際に使ってもらう前の段階で、1人目が最後まで通るのを待っているところです。成果の数字はまだありません。2026年9月6日には設計を見直しました。最初の案は「本部の人が、新人の氏名・店・日時をボードに入力する」というものでしたが、同じ日に「本部が毎回やるのは、いつもの返信文(日時だけ書き換える)をLINEに貼ることだけ。氏名や店は新人本人が入力する」という形に変えました。店の間違いは本部が画面で1クリックで直せるようにしています。本部の人の感想や効果はまだ記録できていませんが、本部の手作業を1つに絞る設計に変えたのは、担当者の仕事を増やさない側に倒した判断です。

待たずに社内で決める3つ

支援機関の伴走が整うのを待たなくても、社内で先に決められることが3つあります。

手順内容
①業務を1つに絞る業務プロセス単位で選ぶ。デジタル化・AI導入補助金2026の審査も業務プロセス単位で線を引いている
②仕事を増やさない線を引く担当者に何を覚えさせないか、AIの間違いを誰が直すかを先に決める
③残すものを決める支援機関の伴走とは別に、現場に入って作り、担当者が触らなくても回る形にして残す役目が要る

①は、業務のどの部分をAIに任せるかを先に絞り込むことです。関連記事「名前はAI導入補助金、線引きは業務プロセスのまま」で書いたとおり、デジタル化・AI導入補助金2026の審査は、AIかどうかではなく業務プロセスを持つかどうかで線を引いています。②は、担当者に何を覚えさせず、間違いを誰が直すかを先に決めることです。③は、現場に入って実際に作り、担当者が触らなくても回る形にして残す役目で、支援機関の伴走とは別に必要になります。

今年度すでに使える制度としては、業務改善助成金があります(関連記事「業務改善助成金は9月1日開始」)。対象になるか・いくら戻るかは都道府県ごとに条件が違うので、計算機で確認してください。

よくある失敗・NGパターン

自社の業務のどこから1つに絞るか迷う場合は、無料相談で一緒に整理します。

よくある質問

人工知能基本計画とは何ですか?

AI法(令和7年法律第53号)第18条第1項に基づき、政府がAI関連技術の研究開発・活用の推進に関して総合的かつ計画的に講ずべき施策を定めた計画です。令和7年12月23日に最初の計画が閣議決定され、令和8年7月14日に改定版(本文で「第Ⅱ期計画」と自称)が閣議決定されました。両版とも当面は毎年変更するとしています。

7月の改定で中小企業に関する記述は何が変わりましたか?

12月版は中小企業向け施策を「デジタル化・AI導入補助金を始めとする中小企業におけるAI導入促進の円滑化を進める」という一文で書いていました。7月版は「人手不足が特に顕在化する地方部における中堅・中核企業へのAI導入・定着を伴走しながら進め、『地域AX』を推進する」「伴走支援を行う支援機関のAI支援レベルの底上げ」という書き方に変わっています。

地域AXネットワークはいつから使えますか?

令和9年度概算要求に載った事業で、まだ各省庁が財務省に提出する要求の段階です。金額も事業名も確定ではなく、資料に開始時期の記載はありません。

「省力化・デジタル化・AI投資補助金」と今の補助金の関係は分かりますか?

資料からは読み取れません。令和9年度概算要求の資料には、既存の省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金2026と統合されるのかどうかは書かれていません。

今年度、中小企業がすでに使える制度はありますか?

業務改善助成金は、今年度の受付がすでに始まっています。対象になるか・いくら戻るかは都道府県ごとに条件が違うため、当ブログの計算機で確認できます。

商工会や税理士に相談すれば、AI導入まで作ってもらえますか?

令和9年度概算要求の地域AXネットワーク事業が書いているのは、中小企業とAIサービス提供者、支援者が「出会う場」の構築と、支援機関側の「AI支援レベルの底上げ」です。現場の担当者に代わって導入作業そのものを担うとは書かれていません。

まとめ

2026年7月14日の改定で、人工知能基本計画は中小企業について「補助金でAI導入を円滑にする」という1行から、「伴走しながら導入・定着を進める」という書き方に変わりました。続く令和9年度概算要求には、地域AXネットワークという新しい枠組みが載りましたが、まだ要求段階で、開始時期も書かれていません。書かれている伴走は、支援機関の底上げと出会う場の構築であって、社内でAIの使い方を覚え、間違いを直し、失敗の説明をする担当者の仕事は減りません。待つのではなく、任せる業務を1つに絞り、担当者の仕事を増やさない線を決め、現場に入って残すものを決める。この3つは、国の伴走の完成を待たずに、社内で今日から決められます。

「うちはどの業務から1つに絞るか」から、一緒に決めます。

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参考(一次情報):
・内閣府「人工知能基本計画 ~「信頼できるAI」による「日本再起」~」(PDF・令和7年12月23日閣議決定)
・内閣府「人工知能基本計画 ~日本AX、より強く、より豊かに~」(PDF・令和8年7月14日閣議決定)
・内閣府「第Ⅱ期人工知能基本計画(概要)~日本AX、より強く、より豊かに~」(PDF)
・内閣府「人工知能基本計画」(掲載ページ)
・中小企業庁「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」(PDF)
・中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」(PDF)
・あわせて読む:中小企業の生成AI導入率は20.4%か34.5%か——調査3本が割れる理由と、自社が入る数字の見分け方(当ブログ・2026年9月3日夕)
・あわせて読む:名前はAI導入補助金、線引きは業務プロセスのまま——汎用AIが単独で通らない理由と、登録済み生成AI27件(当ブログ・2026年9月10日夕)
・あわせて読む:業務改善助成金は9月1日開始——締切は県ごとに最短30日、AIの月額料金が対象になる条件(当ブログ・2026年8月24日夕)
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